電子部品の製造|元自衛官がはんだ付けの仕事に応募する前に確認すること
はんだ付けは、はんだと呼ばれる柔らかい金属をはんだゴテを使用して溶かし、
・金属パーツ同士の接着
・電子基板へのパーツ取り付け
・電線の接着
など、電子部品を製造する際に用いられる加工方法です。
はんだ付けが必要な電子部品は、家電や自動車などあらゆる製品に搭載されており需要が高いことから求人も多く、再就職先として選ばれています。
また、はんだ付けは練習さえすれば、どなたでもスキルを身に付ける事が出来る為、未経験の方でも挑戦しやすい仕事と言えます。
ここでは、はんだ付けの仕事内容、給与、向いている人の特徴などについて、詳しく説明していきます。
1.はんだ付けとは
2.はんだ付けを必要とする製品とは
3.はんだ付けで使うツールとは
4.はんだ付けの方法
5.職場の環境
6.はんだ付けの給与
7.はんだ付けの仕事に向いている人とは
8.未経験から入社するとどうなるか
9.入社後のスキルアップ
10.未経験から応募する時には職場を見ておく
11.まとめ
1.はんだ付けとは


はんだと呼ばれる合金を溶かして、部品の接合を行う作業を、はんだ付けと言います。
はんだは鉛と錫(すず)の合金であり、300度程度の温度で溶かすことが出来ます。
・金属の中でも融点が低い
(一般的な金属の鉄は1500度、アルミは600度前後)
・はんだが電気を通す素材である
ということから、部品の接着・電子パーツの取り付けなど、あらゆる所で用いられています
※最近では環境に優しい鉛を含まない鉛フリーはんだと呼ばれるはんだを用いる事が主流です。
2.はんだ付けを必要とする製品とは


はんだ付けの加工のほとんどは電子部品・電子基板製造の用途で使用されています。
身近なものでは、スマートフォン・テレビ・冷蔵庫・パソコンなどの家電類
その他、自動車・鉄道・通信装置・産業機器など、電気制御が必要な製品には必ずと言っていいほどはんだ付けが必要な電子基板が組み込まれています。
はんだ付けの作業で実際に取り付ける電子パーツには
・ICチップ
・ダイオード
・抵抗器
などがあり、一つ一つはんだごてを用いて電子基板に取り付けていきます。
このように、はんだ付けの仕事のほとんどは、電子機器の製造に関わるものと考えてよいでしょう。
3.はんだ付けで使うツールとは
はんだ付けで使用する代表的なものです。
・はんだゴテ(コテ台)
・はんだ
・クリーナー(スポンジ・ワイヤー)
・はんだ吸い取り器具(吸い取り器・吸い取り線)
・フラックス(リムーバー)
・イオナイザー
はんだゴテ・コテ台

はんだ付けの基本は、はんだゴテを使用した作業です。
電気の力ではんだゴテの先端を熱して、その熱によってはんだを溶かし、製品の取り付けを行うことが出来ます。
使用時には先端の金属部分が300℃程度の温度になり危険なため、はんだ付けをしていない時には上記のコテ台に置いておく事が基本となります。
クリーナー

※参考・白光株式会社

※参考・白光株式会社
はんだごての先端は、はんだを何回かするうちに酸化して、銀色から黒色に変化してしまいます。
この状態では、はんだ付けが上手くいかないため、クリーナーと呼ばれるものを使用して、先端の掃除を行います。
水を含ませたスポンジに、先端をこすりつけて掃除するタイプと、金タワシのようなものに先端を突き刺して掃除するタイプの2種類があります。
はんだ吸い取り器具

※参考・白光株式会社

※参考・白光株式会社
はんだ付けに失敗した場合など、はんだを取り除く必要がある時に使用します。
熱したはんだを吸い取り器で吸引する方法と、吸い取り線に染み込ませて除去する方法の二種類があります。
はんだ付けを失敗したとしても、このように修正する方法があります。
失敗しても修正を繰り返すことで、はんだ付けのスキルを習得していくことになります。
フラックス

はんだ付けをしやすくする為に使う薬品です。
フラックスを基板に塗る事によって、溶けたはんだが基板に接着しやすくなり、上手にはんだ付けすることが出来ます。
はんだに使われている金属の種類やなどによって、使用するフラックス種類は変わります。
はんだ付けを行う職場には必ず置いてある薬品です。
イオナイザー
電子基板などの精密機器は静電気によって故障してしまうこともある為、「イオナイザー」と呼ばれる、静電気を除去する機械が設置されています。

4.はんだ付けの方法
はんだ付けには、はんだゴテを使用する一般的な方法と、機械を使用する方法の二種類があります。
はんだゴテを使用する方法
はんだ付けをする部分(銅色の所)をはんだゴテの先端で触れて温めます。
はんだゴテで温めている間にはんだを溶かし、はんだ付けを行います。
これは一般的なはんだ付けの方法であり、はんだ付けとして出ている求人は、この作業を指すことが多いです。
使用するはんだ

はんだゴテを使用するはんだ付けの場合、糸はんだと呼ばれる、針金のような形状のはんだを使用する事が多いです。
針金のように棒状になっている場合や、ロールとして巻いてある場合の二種類があります。
機械を使用する方法
基板を大量生産する場合や大きい工場の場合は、はんだ付けを行う専用の機械が設置されている場合があります。
はんだ付けを自動で行う機械は、機械に基板をセットして、スイッチを押すことにより自動ではんだ付けを行います。
機械を使用する場合の作業としては、
・機械に基板をセットする
・スタートのスイッチを押す
・仕上がった基板をチェックする
・使用するはんだの補充
であり、細かい作業が苦手な方でも仕事の内容を覚えやすいと言えます。
5.職場の環境
はんだ付けを行う職場では、基板などの精密機器を扱う為、温度や湿度が一定に保たれており、作業しやすい環境です。
空調が効いている
職場では大抵の場合空調が効いており、室温や湿度が常に一定に保たれています。
これは電子基板などの精密機器が、温度や湿度などの影響を受ける為です。
作業着を着用する
製品にホコリやゴミが付かないようにする為、作業着と帽子を着用します。
また、作業着は静電気が帯電しないように帯電防止の加工がしてあり、静電気の発生を抑えています。
換気の仕組みがある
はんだ付けをする時に、はんだゴテの熱によって若干煙が出ることがあります。
この煙を直接吸い込むと喉を痛め、身体に影響があります。
はんだ付けを行うエリア部屋では、煙を直接吸わないように、レイアウトが工夫され、換気設備や煙を吸い取る装置が設置されているので、安心して働くことが出来ます。
6.はんだ付けの給与
はんだ付けはクリーンな環境で働けることから、工場の仕事の中でも人気があり、性別・年齢問わず多くの方が応募しています。
正社員の給与は未経験の場合、月給17~21万円程度(手当除く)の求人が多いです。
はんだ付けは練習さえすれば、どなたでも仕事を覚えられることから、時給制のパートやアルバイトの求人も多く、性別・年齢問わず多くの方が応募しています。
※電子系・工業系の知識がある、工業高校出身ではんだ付けの経験がある、などの場合は優遇される場合もあります。
はんだ付けの求人を探すと時の注意
求人のタイトルに【はんだ付け】と記載されている場合もありますが、同じはんだ付けの求人でも
【軽作業】
【基板の製造】
【実装】
【半田付け】
という違ったタイトルで掲載されている場合があります。
※ICチップなどの部品を、はんだ付けで基板に取り付ける製法を【実装(じっそう)】と呼びます
はんだ付けの求人を探す時には、タイトルだけでなく、仕事の内容まで確認して探した方が良いでしょう。
7.はんだ付けの仕事に向いている人とは
はんだ付けの作業は、はんだゴテを使用して手作業で行う場合と、機械を使用する方法の二種類があり、それぞれ仕事の特徴が違います。
向いている人(はんだゴテを使用)
はんだ付けの作業は、基本的に机で作業を行う事になります。
はんだゴテを使用して、
・ICチップ
・ダイオード
・センサー
と呼ばれる細かい部品を取り扱う為、細かい作業が苦ではない人が向いている仕事と言えます。
取り扱う部品も数センチ程度の細かい物があるため、極度の近視などでなければ、どなたでもチャレンジ可能な仕事と言えます。
向いている人(はんだ機を使用)
はんだ付けの機械を使用する場合は、機械の操作を覚える事に抵抗が無く、手順の通りに作業できる方であれば、どなたでもチャレンジ可能です。
注意することをあげるとすると、
・機械のエラーを見逃さない
・基板を指定された通りにセッティング出来る
・はんだの補充を忘れない
・加工中に触れない
という点です。
8.未経験から入社するとどうなるか
未経験から入社した場合は、
・製品について
・はんだ付けについて
・部品の知識
・安全について
はんだ付けの仕事に必要な最低限の知識の教育を受けます。
一通り教育を受けた後に、先輩社員が監督のもと実際の職場ではんだ付けを行います。
入社してすぐの場合は、作業難易度の低い製品からはんだ付けを行います。
経験を積んだら、徐々に作業の難易度を上げていき、スキルアップを目指します。
はんだ付けの仕事は経験者の応募が少ない為、未経験者の採用を積極的に行っている会社が多いです。
興味のある方にとっては、チャンスがあります。
9.入社後のスキルアップ
入社後しばらくたち、はんだ付けの作業が一人で出来るようになった頃に、
・資格取得や認定の取得
・新たな作業の習得
によりスキルアップを目指す事が多いです。
社内認定を受ける
部品点数が多い・部品が細かいなど、難易度の高いはんだ付け作業をする場合は、はんだ付けの社内認定に合格した者が作業を行います。
公的な資格ではありませんが、社内で作業者としてのスキルを証明することが出来ます。
社内での評価が、新しい仕事を担当する・待遇が良くなる等の待遇改善につながることが多いので、上司から認定の取得を薦められた場合、取得を目指すと良いでしょう。
組立て作業を習得する
はんだ付けの作業に慣れてきたら、基板の組立てや修正など、電子機器の組立て全般に関わる業務を担当します。
はんだ付けの求人に応募して入社する場合でも、スキルアップの為に、ゆくゆくは基板の組立て作業全般を習得することが多いです。
はんだ・電子系の資格を取得する
はんだ付けの仕事をするにあたり、職場で資格の取得が推奨されている場合があります。
・はんだ付け検定
はんだ付け作業に特化した資格です。
1~3級に分かれており、3級は趣味ではんだ付けをする程度の方、2級は仕事ではんだ付けをする程度の方、1級は教育者として、はんだ付けの指導をする立場の方が受験しています。
・マイクロソルダリング技術資格
マイクロソルダリングとは、数ミリ~数センチ程度の小さな部品扱うはんだ付けのことを指します。
スマートフォンやパソコンなど、部品や基板が小さい場合に採用されている技術です。
資格の種類は、作業員向け・検査員向け・指導者向けなどで分かれており、受験には実務経験が必要となります。
・電子機器組立て技能士
電子機器の組立て作業に関わる資格です。
はんだ付けの作業だけでなく、基板の組立てなど、電子機器の組立て・修理作業全般に関わるスキルを証明するための資格です。
1級~3級までの範囲があり、1~2級は受験の際に実務経験が必要ですが、3級は受験資格が不問です。
基板の組立て・はんだ付け・スイッチの取り付け・電源の取り付けなど、電子機器の製造に関わる知識を広く持っている必要があります。
はんだ付けの作業を習得した後、基板の組立てなどの仕事も担当するようになってから、資格を取得する場合が多いです。
10.未経験から応募する時には職場を見ておく
工場で働いた経験の無い方であれば、面接を受けるタイミングなどで事前に職場見学をすると良いでしょう。
職場見学の際は、
・はんだ付けのスピード
・製品の大きさ
・パーツの大きさ
・作業環境
などの点を会社の担当者に質問するなどして、チェックしておきましょう。
働く前の段階で、「仕事の内容が自分に合っているか」、「長く働き続ける事が出来るか」、という点を深く考える事で、入社後のミスマッチを防ぐことが出来ます。
面接の際に職場見学が出来る会社は多いので、求人に応募する段階で職場の見学が可能か担当者に聞いておくと良いでしょう。
定年退職や任期満了が控えている現職の自衛官の方であれば、援護担当の方が企業に職場見学の打診をしてくれるはずです。
参考ページ:再就職方法の比較|自衛隊の基地援護室を活用するメリットとは
参考ページ:攻めの再就職|自衛官の職場見学の方法とチェックすべきポイント
11.まとめ
はんだ付けの仕事は未経験からでも入社しやすく、仕事も覚えやすいものが多いですが、細かな作業が多いことから、性格や適性が合っていないと早期の離職に繋がることもありえます。
仕事を長く続ける為には、自身の性格や適性が合っているかよく考えたうえで仕事に応募し、職場見学をしたうえで入社の決断をすると良いでしょう。
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