自衛官の退職金・若年給付金とは?|退職金の失敗例を紹介
自衛官を定年すると、退職金と若年給付金で合計3,000万円程度支給されます。この2つのお金について今回ご紹介したい内容は、こちらの3つの疑問にお答えしたいと思います。
「退職金と若年給付金はどのように支給されるの?」
「それぞれ税金はどれぐらいかかるの?」
「退職金と若年給付金の使い道で気を付けておくことは?ありがちな失敗事例は?」
退職金を住宅ローンの返済に全て使ってしまった、
翌年の住民税がかなり負担になった、ということは良くある話です。
こちらのページでは失敗事例を紹介しながら、皆さまの退職金を使い道の計画をお役に立つ情報をご紹介します。
退職金と若年給付金の仕組みについて
退職金について
基本的に退職金は退職日に支給されます。
退職金の支給金額の計算について以下の①と②の合計金額が支給されます。
①(基本額)= 退職時の俸給 × 勤続年数に応じた支給率
②階級に応じた調整給 = 調整月額 × 60
階級により金額は違いますが、曹長クラスで2,000万程度、佐官クラスで3,000万程度の退職金が支給されると考えておいて良いでしょう。
ただし、この金額は年々少なくなっている傾向にあります。
若年給付金について
若年給付金の支給金は2回にわたり支給されます。(平成二十一年防衛省令第五号第一条より)
1回目の支給
【10月~3月までの退職者】→次の4月支給
【4月~9月までの退職者】→次の10月支給
2回目の支給
【全ての退職者】→退職の翌々年の8月
支給計算について割愛しますが、1回目が400~500万程度、2回目が800~1,000万程度支給されます。合計1,300~1,500万前後の若年給付金が支給されることになります。
税金について
「退職金」と「若年給付金の1回目」は所得税、住民税が控除された金額が支給されます。そのため当年の確定申告処理は必要ありません。しかしながら支給された年の翌年は所得がアップしたことになりますので、翌年の1年間の住民税の合計が通常の年より100万円近く控除されることを知っておきましょう。
また「若年給付金の2回目」は確定申告処理が必要となります。若年給付金が支給された翌年の一年間も住民税が上がりますので、押さえておきましょう。
それぞれ、長く働いた自衛官の皆様に退職金と若年給付金が支払われます。理解しておくべきポイントは、
・退職金は在籍中に積み立てた退職引当金を退職した時にもらうため、「給与の後払い」という面がある
・若年給付金は、一般的な企業は通常60歳が定年となっており、自衛官の退職は若くして定年してしまうため、他で勤めていればもらえていたであろう60歳までの数年分の給料を「給付金」として支給しているため、再就職後の給料が下がる補てんの意味で支払われる。
両者ともに、特別ボーナスのような形で支給されているわけではないということを理解しておいてください。
この二つを勘違いしてしまい、何も考えずお金を使ってしまうと取り返しのつかないことになっていまします。
次の章以降、ありがちな失敗事例を紹介しながら、反面教師として参考にしてみてください。
参考ページ:退職金・若年給付金で老後は安心?|自衛官定年後に減る収入
退職金・若年給付金の使い道失敗例
定年退職という大きな節目に、退職金という普段手にすることのない大金が入ると、普段にはない選択や行動をしがちです。
長年にわたる勤務で手にした大切な退職金を後悔の無いように使う為、退職金の使い方として、よくある下記の失敗例をご紹介します。
よくある事例は「住宅」、「車」、「投資」、「ギャンブル」関連です。
住宅(リフォーム)の場合の失敗例
退職自衛官(54歳)
「退職金をもとに家をリフォームしようと考えていた」
マイホームを購入したのが30歳半ばで家を購入し、長く住むうちにいろいろなところが経年劣化してきたので、退職金をもとにリフォームしようと考えていました。地元のリフォーム業者に依頼し工事を任せることになりました。
1,000万円程度の予算と考えていましたが、工事を進めるにつれて、水回りの損傷、柱の劣化など追加の工事が必要になっていきました。
結果として、想像以上に様々な所をリフォームされてしまい、約1,500万円の高額な支払いをする結果となってしまった。
【コメント】
この場合は、ローンの返済期間が残り少なくなってきているため、負担は少ないため良いケースです。しかしながら、複数のリフォーム業者から見積もりを取る、最低限の修繕に押さえておくなど工夫が必要です。
退職金で賄える範囲ではありますが、基本的に退職金の半分を住宅にあてることは、今後の生活費や追加修繕、維持費など費用を考えると非常にリスクが高いです。
車購入の場合の失敗例
退職自衛官(56歳)
「退職金で趣味の車を買おうと考えていた」
これまで育児や外出も多く、ファミリーカーを所有していましたが、子供も成人して大きな車は必要なくなってきたため、買い替えを考えていました。
退職金と若年給付金も入り、再就職がうまくいって毎月安定した給与があることから、かねてからの夢であった高級外車に乗り換えたいと考えていました。
永年勤めあげた自分へのご褒美として約700万円の車を購入しました。
しかし、買った後に駐車スペースギリギリの大きな車体にストレスを感じたり、タイヤやオイルなどの消耗品・自動車税などの維持費がファミリーカーの時の2倍以上かかることに驚いてしまったと言います。
【コメント】
退職金をもとに、自衛官時代に出来なかった車や趣味などにお金を使うことは良くあることです。しかしながら、再就職した時に収入に応じた生活やライフスタイルを送らなければ、毎月の生活費の負担が増えることは理解しておきましょう。
そのため、車や趣味などの買った時の満足だけでなく、購入後の生活設計もしっかりと考えておきましょう。
投資の場合
退職自衛官(55歳)
「株や投資に興味があった」
退職金を手に入れて、この先70歳位までなら問題無く暮らしていけるのですが、80歳、90歳まで生きるとしたら、退職金だけだと不安だと思うようになりました。
投資については全く知りませんでしたが、興味があったので、銀行に相談に行き、比較的リスクが少ないと教えてもらった株式に退職金の半分ほど投資することにしました。
リスクが少ないと言われている株式に投資していたので、のんびりと長期的な運用をしようと考えていました。
しかし、景気の変動により株価が下がり、投資を辞めるタイミングが分からず、結果的に数百万の損失を出してしまった。
【コメント】
退職金を元手に、元手を増やして安定した生活を送りたいと考えて始める人が多いようです。しかしながら投資はお金を減らす人がいるから、増やす人がいます。
そのため元手を増やそうと考えて投資をするという安直な考えで始めると痛い目にあうということは、初心者に良くあるケースです。
元手を増やしたいということであれば、保険など幅広い選択肢を検討してみることをおすすめします。
ギャンブルの場合
退職自衛官(56歳)
「定年後の自由な時間を趣味に使いたい」
今まで趣味として競馬やパチンコを楽しんでおり、金額としては月に5,000円程度で、多くても1万円程度でした。
そこまで多くの金額を使うわけでは無く、お小遣いの範囲で遊んで楽しんでいたので家族に反対されるようなことはありませんでした。
退職金が入り、気が大きくなってしまい、今までよりも多くのお金をつぎ込んでしまいました。今まで5,000円くらい負けたら諦めて帰っていたのが、5万円負けてもまだお金があるからとつぎ込んでしまい、結果として100万円以上を使ってしまった。
【コメント】
趣味にお金を使う時に、金銭感覚がマヒしてしまうことがあります。自衛官時代に続き、再就職後の生活水準の範囲でお金を使うようにしておきましょう。
失敗例から退職金の使い方を考える
いくつか考えさせられる例をご紹介しましたが、いかがでしょうか。
これらの例から分かることは、人は今まで手にしたことのないような、まとまった大金を実際に手に入れると、お金の使い方について判断を誤ることがあるということです。
退職金ほどの大金を使うことに対して、慣れている人はいません。慣れていないからこそ、使い方に対して特に慎重に考えていきましょう。
退職金を手にしてからのお金の使い方の注意点
・退職金は数年で使う物ではなく、基本的に老後の生活費だと考え、安易に使わない
・退職金を使うときは、家族と相談しながら、慎重に使う
・今までの暮らしに無かった物や、買わなかった物については、買う必要があるか検討し、必要が無いと判断したものは買わない
・買った物の5年・10年後の維持費も考えておく
参考ページ:自衛官の再就職|定年退職後の有意義な時間の使い方
まとめ
年齢を重ねるにつれ想定外の、全く考えてもいなかった予期せぬような出費が現れるものです。その時に、少なからずいつでも使えるお金を持っておくということは非常に大切なことです。お金の心配は、心を痛め、生活を不安定にします。
数千万円の退職金と若年給付金は限られたものです、浪費してしまえばすぐに無くなってしまいます。退職金の使い道について今一度考えておきましょう。