再就職方法の比較|自衛隊の基地援護室を活用するメリットとは
自衛官の再就職では、
基地援護室・地方協力本部(以下基地援護室という)のサポートを受けて再就職する方法と、自分自身(一般的には自己開拓という)で再就職する方法の2種類があります。
基地援護室では、応募書類の作成や面接対策などの就職援護活動に必要な細やかなサポートを受けられるなど、心強い反面、普段あまり行くことが無いので、
- 職種が偏っているのではないだろうか
- 求人数が少ないのではないだろうか
- 就職援護室に無い求人は相談を受けてくれないのではないだろうか
などのイメージを持ってはいないでしょうか?
このようなイメージをお持ちの場合、基地等援護室を使わずに転職情報サイト・転職エージェントなどの民間企業の転職サービスや、ハローワークを使うことを検討することになります。
これから、基地援護室を使わない再就職方法と、基地等援護室を利用する場合のメリットについて説明していきます。
1.基地援護室を活用しない再就職方法とは
就基地援護室を使わない再就職方法はいくつかありますが、下記のものが有名です。
・転職情報サイト
・転職エージェント
・ハローワーク
・知人の紹介
1.1 転職情報サイト
転職情報サイトとは分かりやすく説明すると、リクナビやマイナビなどの求人情報が掲載されているサイトのことです。
あらゆる業種、職種の求人から条件を絞って検索することが可能ですので、興味のある企業を探す時には、非常に役立ちます。
自衛官でない方の転職活動では、よく使われているサイトと言えます。
【メリット】
求人の数が非常に多い
あらゆる業種、職種の求人が掲載されている
ネットで気軽に求人を調べることが出来る
【デメリット】
求人情報のみの提供で、その他のサポートは基本的に無い
面接の日程調整などを全て自分で行う必要がある
相談する人が居ない
1.2 転職エージェント
転職エージェントの担当者が、希望や条件などを転職希望者からヒアリングして、その人に合った求人を紹介してくれるシステムです。
面接の対策や応募書類の添削、面接後のフィードバックなどのサポートがあり、転職情報サイトには載っていない、非公開求人を紹介してくれる場合もあります。
【メリット】
業界に特化したエージェントもある
面接対策や応募書類の添削などのサポートがある
転職情報サイトに載っていない非公開求人もある
【デメリット】
転職エージェントと面談をする必要がある
希望と違う、内定の出やすい企業を勧められる場合もある
1.3 ハローワーク
日本全国にある、ハローワークを使う仕事探しです。
求人の掲載に、転職情報サイトのように掲載費がかからないので、多くの求人が紹介されています。
小さな会社ですと、ハローワークにしか求人票を載せていない場合もありますので、中小企業を含めた転職活動の際には、強い味方となるでしょう。
ほか、職務経歴書の書き方や面接対策、希望する職に必要とされる訓練や資格について、対策セミナーや、資格取得の為の職業訓練のあっせんなどもおこなっています。
【メリット】
中小企業を含めた求人数が多い
自己分析の無料セミナーなどを開催している
職業訓練のあっせんをしてくれる
【デメリット】
仕事の紹介はしてくれるが、その先の調整は自分で進める必要がある
退職日がある程度決まっていないと、セミナーや紹介状発行などのサポートを受けることが出来ない
無料で求人を出せるので、悪い待遇の求人票も混ざっている危険がある
1.4 知人・友人の紹介
知人・友人の紹介による仕事の探し方です。
その方との付き合いの程度にも左右されるとともに、その方の主観で仕事を紹介される場合もあります。
紹介で仕事に応募する時には、自分でよく考えたうえで決断するようにしましょう。
【メリット】
自分の身近な人の意見がいろいろ聞ける
面識のある人が同じ会社で働いているので心強い
【デメリット】
知人・友人の紹介だけに、あまり細かいことまで聞きづらい
後にミスマッチであったとしても辞めづらい
仕事以外のことに気を使う場合もある
2.援護担当者の仕事とは
ご存知の通り援護担当者は、定年退職予定者や任期満了退職予定者の現職自衛官に対して、自衛隊を退職後の再就職をサポートしています。
応募書類の添削や面接の指導、企業との調整などの、自衛官の再就職をサポートする仕事と、今まで自衛官の採用実績の無い企業に対して自衛隊の広報活動を行い、定年退職自衛官や任期満了退職自衛官の新しい求人を獲得する仕事の2つをメインに活動しています。
3.基地援護室を活用した再就職のメリットとは
退職を見据えた自衛官が、基地援護室を使った場合の再就職のメリットとして、
わかりやすいものは、
・退職自衛官を採用する予定の企業紹介
・各種書類の作成要領や添削指導
・企業面接の指導
・企業との調整
と言えるでしょう。
今までに多くの自衛官の再就職を援助してきた実績、再就職を求める自衛官個々の性格や希望を良く知っている現職自衛官の担当者が、利害抜きで親身に最良の再就職先を考えてくれていることが、民間企業の転職サービスやハローワークには無い最大のメリットです。
この最大のメリットについてさらに詳しく記載してみます。
3.1 防衛省・自衛隊のブランド力
退職を控えた自衛官は、基地援護室を通して企業の選考を受ける時点で、一般の方には無い大きなアドバンテージがあります
基地援護室を介した再就職活動は、援護担当者の自衛官が「この人なら御社の期待に応えます」と、企業側に紹介します。
現職の援護担当自衛官が、人となりを把握したうえで紹介をしているということで、企業としても、一般の転職希望者に比べて、安心して応募を受け入れることが出来ると言えます。
3.2 援護担当者は常に本音
援護担当者は再就職の相談をする中で、基本的に本音で対応してくれるはずです。
例えば、退職を控えた自衛官から「興味があるのでこの企業を受けてみたい」などという相談があった場合、求人の応募の理由が、
・仕事内容に興味がある程度
・ただ給与が高いから
・知っている企業だから
という程度では、おそらく援護担当者は企業に対する認識や本気度に疑問を持ち、様々な角度から皆さんの意志を確認するでしょう。
時には、「本当にこの企業を希望しますか?大丈夫ですか?厳しいですよ」というように、ダイレクトに言葉を濁さず本音で聞くこともあります。
同じ自衛官の立場であり、今までに多くの自衛官を見てきたこと経験から、利害抜きの本音で話し合い、ベストマッチの企業を真剣に探そうとしているのです。
このように難しいところは難しいと、今の考え方や姿勢では厳しいと本音で言ってくれるところが、基地援護室の良いところと言えます。
3.3 全国ネット
退職を控えた自衛官が「実家に戻りたいので、郷里で再就職をしたい」「今は郊外の基地で勤務しているが、定年後は首都圏で仕事をしたい」など、遠隔地での再就職が希望の場合でも、援護担当者は相談に乗ってくれます。
全国に所在する基地援護室があるので、希望再就職勤務地と現在の居住地が違う場合でも、援護担当者同士で連絡を取り、出来る限り希望に沿えるように再就職活動のサポートしてくれます。
3.4 部隊との連携
再就職をするために、希望企業の見学や面接などで職場を休まざるを得ない場合もがあるはずです。再就職活動で休暇を取るのは、なかなか言いだしづらいものです。
基地援護室を通じての再就職活動の場合には、状況やその活動の必要性についても部隊の上司や人事担当者に連絡してもらうことで、再就職活動に専念できます。
3.5 入社時期の調整
自衛官の再就職で内定を取る時には、可能な限り入社日が1年前後になる、余裕をもった再就職活動をすることが理想です。
ですが、一般の転職活動では、内定が出たら出来るだけ早く入社することを求められているケースがほとんどです。
基地援護室を通しての再就職の場合、既に何名か自衛官を受け入れている企業であれば、退職日の説明や内定から入社までの期間などについては援護担当者から説明済でしょうから、企業への入社時期の調整については心配要らないでしょう。
それ以外の、今まで自衛官を受け入れたことの無い新規に開拓した企業であっても、援護担当者が退職日に合わせた企業との調整をしてくれるので安心です。
4.やりたい仕事が就職援護室の求人に無い時は
自分のやりたい仕事が基地援護室の求人情報に無い場合は、数々のメリットがある基地援護室を使った再就職活動を諦めて、転職情報サイトやハローワークで求人票を探し、自分で再就職をしなければいけないのでしょうか。
答えとしては諦めるのでは無く、自分自身の興味のある仕事について、援護担当者に相談することをお奨めします。
その際は、先ほど【3.2援護担当者は常に本音】の項目でお伝えしたように、ただ漠然とこんな仕事はないのかというように理由が固まっていない状態ではなく、希望する理由も固まっていて、就職後のことについてもしっかりと考えたうえで相談する必要があります。
希望の条件に近い求人票を転職情報サイトなどで入手し、援護担当者に見せて相談するのも有効です。
援護担当者にしっかりと再就職について考えていることが伝われば、たとえ基地援護室に求人情報が無かったとしても、他の基地援護室に条件の近い求人情報が無いかを問い合わせてくれたり、今まで入社実績の無い企業だとしても、退職自衛官の採用選考を企業に打診したりしてくれるはずです。
そのためには皆さん自身の希望などを、余裕のある早い時期に援護担当者に伝えておく必要があります。
5.まとめ
基地援護室を使った再就職は、退職を控えた自衛官だけが使える特別なものです。
基地援護室を有効に活用することが出来れば、一般の転職者と比べて有利に仕事を見つけることが可能と言えますが、有利に再就職が出来るかどうかについては、皆さんが積極的に援護担当者との関係を構築していくことが大切となります。
「まだいいだろう」「仕事が忙しい」などといった後ろ向きな行動ではなく、自分自身の重要な第二の人生を左右する再就職活動であることを認識して、出来るだけ早い時期から再就職のことについて真剣に考え、援護担当者との密接で忌憚のない意見交換と情報を収集することが、皆さんの最良の再就職への一歩となるでしょう。