自衛官が退職後に家を買う時に気を付けるべきこと

「家を買う、マイホームを手に入れる」ということは、平均寿命男性で81年、女性で87年の人生の中でとても重大な決断であり、最も高額な買い物ではないでしょうか。

定年退職する方であれば、退職金の使い道の一つに家の購入を考える人もいると思います。人生の中で、重要な選択がいくつかあります。進学、就職、車、結婚、そして家を買う時などその都度、悩みながらも決断していきます。

ここで、自衛官として退職後に家を買おうかと考えている人に向けて、気を付けておくべきポイントを紹介します。

家を買う時に考えるべき基礎知識

まず、「住まいを考える」というところには「買う」か「買わないか」という選択肢があります。それは「持ち家」「賃貸」ということです。

次に「持ち家」と決めた場合には、「一戸建て」か「マンション」にするか、「新築」か「中古」というジャンルを選んでいきます。

更に一戸建てなら、「建売住宅」か「注文住宅」は、マンションであれば「高層」か「低層」、といったように種類を選択していきます。その他には「場所は?」「環境は?」「予算は?」など個々に決めていく必要があります。

住宅購入に至るまでの基本的な流れ

まずは、住宅購入の一般的な流れを知っておきましょう。新築・中古住宅や一戸建てもマンションも基本的には概ね同じ流れです。

1.資金計画や購入住宅のイメージ

・購入したい住宅の検討をします

(新築か中古か?一戸建てかマンションか?)

・資金(調達)計画の検討をします

(貯蓄・住宅資金の贈与の有無・住宅ローンの借入金額など)

・購入時期の検討をします

2.物件の見学と絞込み

・広告等から物件情報を入手・蓄積します

・物件の見学を機会を見て実施します

(不動産会社の案内・モデルルーム・オープンハウス・展示場など)

・得た情報や見学した中から物件の絞込みをします

・必要であればリフォーム予算の検討も行います

3.住宅購入申し込み・住宅ローンの事前審査(仮審査)

・購入の申込手続きを行います(申請書提出)

・申込金を支払います

・誠実に価格交渉を行います

・住宅ローンの事前審査(仮審査)の申込の手続きを行います

4.住宅購入の手付金の支払いと契約

・重要事項説明書と売買契約書を契約前に細かく・入念に確認します

・事前にしっかりと準備をし、取りまとめておいた質疑応答を行います

・契約書に署名押印します

・手付金の支払いを行います

5.住宅ローンの本申し込みとローンの承認

・申込書を金融機関へ提出します(必要書類と共に)

・審査と融資の承認を受けます

・融資額の減額が生じれば購入計画自体を十分に再検討し判断します

・融資不可という結果の場合は、原則他に手段がなければ解約し購入を中止します

6.住宅の引き渡し前の立ち合い時の確認事項とチェックポイント

・購入物件の建物の状態をしっかり確認します(内覧会など)

・後のトラブルになる境界位置の確認は確実に行います

・補修工事と補修後の確認をします(再内覧会)

7.残代金の支払いと引き渡し

・住宅ローンの融資実行と残代金の支払いを行います

・鍵の引き渡しを受けます

・登記申請手続きを行います

以上が住宅購入の基本的な流れです。

実際には、物件探しなど進んでいくと、わからなくなることが多く出てくることが予想できますので、基本的な流れを確認できるようにおさえておきましょう。

住宅購入で後悔しないために

住宅購入は、あなたの人生を大きく左右するようなビッグイベントです。また、人生で最も大きな買い物とも言えるでしょう。

一度購入してしまえば、簡単には変えることができないので失敗することはできません。「月々の家賃と家のローンがあまり変わらない」というだけで、「家を買おう」と決断し、わずかな期間で数件の物件を見て回り、それだけで数千万円というマイホームの購入を決断するというものではないと思います。

少なからず、十分な検討をせず自宅を購入し、その結果、購入したものの諸事情によってそれほど長く住むこともなく手放される方もいます。

住宅購入の心構えとして、後悔しないためにも「しっかり迷うこと」が必要です。

これにより、住宅を見る目も養われ、より的確な購入判断へと繋がっていくことでしょう。

はじめて住宅を購入しようとする人に不動産に関する専門知識が不十分なことは当然のことですし、わからないことが一杯あるのは当然のことなのです。

はじめて家を買う側が遠慮して、不安があり「もう1回見学したいのに何度も申し訳ないので頼めない」「初歩的なことを質問するのは申し訳ない」などと考えてしまいがちですが、それでは後悔は生まれても、良い結果には決してつながりません。

数千万円の商品を購入するのです。「人生最大の買い物なんだ」と遠慮しすぎない強い気持ちを持ちましょう。

遠慮することとマナーを守ることは全く違うので注意しましょう。

質問・相談・要求をしっかりしていくようにしましょう。いろいろなことに注意し迷いながら、住宅選びを進め、物件を絞りこめれば、いよいよ売買契約を結ぶ運びとなります。

さて、その売買契約や建築工事請負契約の内容を把握、もしくはリスクチェックをして契約締結している人はどれほどいるでしょうか。

契約書には様々な取り決めが書かれていて、その中には買主にとって不利なこともあれば、その逆の内容も存在することがあります。

しかし、契約書とは何か問題が生じたとき、トラブルが生じたときのために作成していると言っても良いでしょう。

もしもの時のために、買主であるあなたとって不利になることがないかをしっかり確認しておき、不利益な内容を契約前に修正しておかないと後悔することになりかねません。住宅売買に関するトラブルは、この契約書次第で被害を大きくも小さくもできます。

住宅の売買契約や建築工事請負契約を結んだ後のイベントは、次は引渡しです。住宅の引渡しと同時にその代金の残金を支払うことが一般的です。これによって、所有権が買主であるあなたに移るというわけです。

この引渡しの直前は本当に大事な時期で、購入した住宅が契約通りにしっかり施工されているかどうかを確実に確認しなければなりません。

これは残代金を支払ってしまう前に確認し、不備があればその補修をしてもらう唯一の機会なのです。

残代金の支払いを終えた後になると、不動産会社や工務店の対応が遅くなったり、しっかり補修対応してくれなかったりという事例も起こり得ますので要注意です。

買主はしっかり引渡しが完了するまでは、気を抜かないように心掛けましょう。人生を左右するような大きな買い物ですから、自らの手でリスクは避けましょう。

住宅購入時の知っておきたい予備知識

売主が買主を選ぶということ

例えば、ある物件に対して購入を希望する買主が複数いる場合に、購入希望者の中から誰に売るかを売主が選ぶという意味です。ある建売物件の購入希望者が複数いる場合において、同時期に購入を希望する人が複数いる状況に生じます。

売主が売りたい相手とは以下の3つの特長があります。

①資金に余裕のある人

住宅購入資金について全く心配の要らない購入希望者住宅購入に必要な資金(購入代金や諸費用)を全て現金で用意する人は、住宅ローンの融資を受ける人よりも売主にとって良いお客様と考えられます。

融資を受ける人はその審査で承認が下りなければ購入中止となることが起こり得ます、そうなれば売主にとっては売却の機会損失ということになります。売主とすれば、確実に売れる買主が最も優先したい人となるのは当然のことです。

②勤務先など属性が良い人

住宅購入資金についてそれほど心配の要らない購入希望者住宅ローンを利用して購入しようとする人、大手有名企業に長く勤務していて、頭金も十分に用意しているなど、勤務先・勤続年数・自己資金・年収などの条件が住宅ローンの融資審査に有利だと考えられる人です。

③クレームを言わないであろう購入希望者

住宅産業はクレーム産業だと昔から言われていますが、物件見学・購入申込などの流れの中で、あまりクレームを言わない、細かなことをあまり気にしないなどと感じる人を優先しようとすることがあります。

これは、言い換えれば、売主にとって非常に都合の良い買主ともいえると言えます。

売主の言うこと・要望を受け入れてくれそうな購入希望者何か取り決めのないことやトラブル・意見の相違などが生じることは住宅売買ではよくあることですから、そういったときに売主の要望を受け入れてくれそうな人を良い買主と考えられます。

購入を検討するときは、不動産業者とのやり取り、連絡の一連の中でも売主に選ばれているということを覚えておくと良いでしょう。

持ち家と賃貸、どちらが得か?の観点

こちらをお読みの皆さまの中には「持ち家」にすべきか、「賃貸」でいいのかと考えている人は多いと思います。

住まいにはその人の価値観が大きく反映されることので、単純に「かかったお金の損得」だけで割り切ることはできないものです。

例えば最近、バッグや時計のようなブランド品などのレンタルビジネスが人気を集めて現状があります。

「いろいろ違うものを試せていい」と重宝がる人がいる一方で、「所詮自分のものでないし、自分のものでないので嫌だ」と、あくまで自分の物にしたいとこだわる人もいます。人それぞれの価値観の違いによって変わります。

では、家を購入するには何千万円という大金が必要で、かかったお金の損得だけで明確な答えを出すことはできないのではないでしょうか。

購入と賃貸の両方のかかるお金を比較することは、明確な結論を引き出す重要な要素とは言い切れません。

なぜなら、将来の金利や不動産価格の変化、家族構成の変化や転勤の有無等により、条件が変わってくるからです。更には、「自分自身が何歳まで生きるか」によって損得の在り方が大きく変わりますが、これだけは予測がつかないことです。

賃貸の生活の場合、部屋を借りるのが簡単になりましたが、月々の家賃を支払わなければなりません。

高齢化社会にあって、年々寿命が延びることにより、家賃の支払期間も当然長く支払い続けるということも考えなければなりません。

つまり、生活費にかかる住居費の負担は非常に大きくなるということです。

例えば、54歳で定年を迎え、85歳まで生きるとします。

仮に家賃が月に8万円として単純計算すると、「8(月)×12(ヵ月)×31(年)」で2,976万円の支払いが家賃代として必要になります。

さらに寿命が5年延び、90歳まで生きたら3,456万円になります。定年後に必要なお金に、この金額を加算して将来設計を考えておかなければいけないことになります。

一方、住宅を購入して定年までに住宅ローンの支払いを完済すれば、住居費は基本的にかかりません。

当然、固定資産税や修繕費、マンションであれば管理費などを用意しておかなければなりませんが、老後の生活における毎月の金銭的負担はかなり軽減されますし、心理的負担も少なくなります。

しかしながら、これはあくまでも住宅ローンを定年までに完済することが前提です。

定年後にもずっしりと住宅ローンが残っている場合、毎月の金銭的負担という意味では、住宅購入でも賃貸でも大きな違いはありません。

お金の問題以外にも、持ち家であればペットも自由に飼えるし、リフォームもできるけれど、賃貸はそうはいきません。

その一方で、ゴミ屋敷など周囲の環境に問題が生じた時、賃貸なら引っ越せば解消しますが、持ち家では売るにも貸すにもそれなりの手間がかかります。

どちらにも、違った意味でのメリットもあれば、不自由さやリスクもあるということです。

「住宅購入」と「賃貸」のメリット・デメリットの観点

住宅購入のメリット

・持ち家の安心感

・賃貸仕様のマンションより設備のグレードが高い

・ローンを払い終わると住居費が格段に安くなる

・老後までにローンが完済できると、年金生活の居住費を抑えることができる

住宅購入のデメリット

・多額の住宅ローンを組むと、収入減や失職した場合に返済不能に陥るリスクがある

・仕事や、やりたいことに合わせて転転居することが難しくなる

・ご近所とのトラブルが発生しても転居しにくい

・持ち主の死亡後誰も住まない場合、売却などの整理が発生

賃貸のメリット

・子供の成長などライフスタイルの変化に応じて、住み替えることができる

・ご近所とトラブルがあったら引越しが可能

・地震や災害で建物が倒壊しても、引越しすればよい

・設備が老朽化しても、自分のお金で修理しなくてもよい(例:風呂釜、外壁等)

賃貸のデメリット

・家賃は安くはないので、家賃を払いながら住宅購入資金を貯めるのは難しい

・賃貸アパート、マンションの設備は分譲物件に比べグレードが低い傾向にある

・老後に賃貸生活をするなら、家賃分の老後資金を貯めておく必要がある

それぞれのメリット・デメリットを記述しましたが、メリットについて端的に言うと住宅購入は「老後の安心」で、賃貸は「柔軟性」ではないでしょうか。

また、それぞれのデメリットは、不思議なことに表裏になっており、住宅購入は「予期せぬ事態に対して柔軟に対応しづらい」ことで、賃貸のデメリットは「老後に支払い続ける家賃の不安」です。

これを参考に、自分の得たいものや背負いたくないリスクは何かを考えることも大切なことだと言えます。

※ある住宅企業が実施したアンケート結果

アンケート結果で、持ち家と賃貸を選択する人では、個人年収と世帯年収に大きな差はないという結果が出ています。

何故「持ち家派」と「賃貸派」に別れるのでしょう。

まず、「持ち家が得」と考えている人は88%、「賃貸が得」と考える人が77%という結果が出ています。

そして「その考えは今後も変わらないか」という質問に対して、持ち家派は「変わらない」と答えた人が70.3%で、賃貸派は29.7%という結果が出ています。

賃貸派の「変わる」理由は、年齢や収入増によって変わる可能性があるということで、自分自身を取り巻く環境や状況によって十分に変化する可能性があるということです。

賃貸・持ち家のメリット・デメリットとしてよく言われるのは、「住み替えやすい/安心感がない」、「安心感がある/ローンを払い続けなくてはならない」などというものでしたが、

それぞれを選んだ人にその理由をフリーアンサーで聞いたところ、回答は次のようなものでした。

■持ち家派
1 資産になる
2 自由にできる
3 所有する安心感
4 音など周りに気を使わない
5 家賃がもったいない

■一生賃貸派
1 住み替えやすい
2 災害やローンなどのリスクが少ない
3 気楽/購入は面倒
4 維持・管理が楽
5 購入資金がない

「どちらが得か」と考えるより「自分自身がどうしたいか」と考えることがとても重要になってくるのではないでしょうか。

興味深かったのが、「将来、家賃/住宅ローンが払えなくなるかもしれないという不安はありますか?」という質問に対して、賃貸派の40.7%、持ち家派の41.0%と、どちらも約4割が「はい」と答えていることです。

「持ち家」「賃貸」どちらを選んだ人でも将来についての不安はぬぐい切れないという点では共通していることです。

まとめ

自衛官の皆さまの中には、すでに自宅をお持ちの方、定年後に購入を考えている方、今後考える予定の方等々、いろいろな方がいると思います。家の購入は、人生において最高・最大の買い物です。

どれが正解などと言うものはありません。人それぞれの価値観、取り巻く環境や状況の変化等々を踏まえ、それぞれのメリットとデメリットを理解し、決断しておくことが重要と考えます。

こちらの記事が皆さまのお役に立てれば幸いです

参考ページ:自衛官の再就職|定年退職後の有意義な時間の使い方