入社の前に知っておきたい言葉遣いとビジネスマナー

皆さんご存知の通り、自衛隊には礼式が存在し、それをもとに、儀式や行事を執り行います。プロトコールもある程度ご存知だと思います。

それと同様に民間企業にも「ビジネスマナー」が存在し、重視されています。

企業がビジネスマナーを重視する理由として、ビジネスの現場では、上司や同僚、取引先などの様々な関係各者と一緒に仕事を進めていく為に、相互の理解、信頼関係を築くことが仕事を円滑に進める重要なポイントになるからです。

そこで構築された信頼関係が、個人だけのものではなく、その人が所属する会社への評価にもつながり、結果として業績に影響を与えることになります。

これから、自衛官の皆さんに入社の前に知っておくとよい「敬語の基本」と「ビジネスマナー」をご紹介します。

【敬語の基本とよくある表現】

敬語は相手に敬意を示す手段の一つです。その人となりを表すと言って過言ではありません。完璧ではなくても、敬語を使おうとする姿勢が相手への敬意として伝わるので、ぜひ自然に使えるようにしておきましょう。

まず敬語の基本として、大きく分けて「尊敬語」「謙譲語」「丁寧語」の3種類があります。

〇尊敬語

相手側の行動を丁寧に言い表すことで、敬意を表現します。

「言う・話す」であれば【おっしゃる】、「見る」であれば【ご覧になる】、
「聞く」は【お聞きになる】、「行く・来る」は【いらっしゃる・お見えになる】、

「する」は【なさる・される】、「読む」は【  ?  】

よくある間違いは“お読みになられる”という表現ですが、
正しくは、【お読みになる】という形になります。

〇謙譲語

自分側の行動をへりくだって言い表すことで、敬意を表現します。

「言う・話す」であれば【申し上げる、申す】、「見る」であれば【拝見する】、
「聞く」は【うかがう・拝聴する】、「行く・来る」は【うかがう・参る】、

「する」は【いたす】、「読む」は【  ?  】

よくある間違いは“拝覧”という表現ですが、
正しくは、【拝読する】という形になります。

〇丁寧語(です・ます)

丁寧な言葉使いにより、相手を立てて表現するものです。

「言う・話す」であれば【言います・話します】、「見る」であれば【見ます】、
「聞く」は【聞きます】、「行く・来る」は【行きます・来ます】、

「する」は【します】、「読む」は【  ?  】

そうです、【読みます】という形になります。

相手の会社を「御社」「貴社」 と表現する

「御社」「貴社」は相手の会社を立てる表現となります。

電話などの口頭で話す場合は「御社」と表現し、メールなどの書面の場合は「貴社」と表現します。

民間企業では必須の表現なので、この2つはしっかりと使い分けましょう。

自分のことは「わたし」「わたくし」 と表現する

自分を示す一人称は、「わたし」「わたくし」と表現しましょう。

「僕は」「自分は」といった表現は仕事の場面では基本的に使いません。

相手と既に長いお付き合いがあり、信頼関係も生まれている状態であれば、このような表現をする場合もありますが、最初は「わたし」「わたくし」という丁寧な表現をしましょう。

相手に対しての同意は「承知いたしました」「かしこまりました」 と表現する

相手に対しての同意を示す表現は「承知いたしました」または「かしこまりました」が正しい表現です。

今までは「わかりました」「了解です」といった言葉を使用していたこともあるかと思いますが、これは敬意を表す表現ではありません。無意識に口に出さぬよう注意しましょう。

謝罪するときは「申し訳ございません」と表現する

謝罪の必要がある場合は、「申し訳ございません」と、謝罪の気持ちを伝えましょう。

「ごめんなさい」「すみません」という言葉は、敬意を表す表現ではありません、今後もビジネスの場では使うことの無いよう十分注意しましょう。

【会社と連絡を取る時、訪問する時のビジネスマナー】

ここからは、入社してから必要なビジネスマナーの基本をお伝えします。

入社手続きで勤務する前に会社に行くこともあると思います。その時から気を付けるべきビジネスマナーです、ぜひ覚えておきましょう。

○会社との連絡を行う場合のマナー(電話)

入社手続きの連絡や、入社してから取引先などに対して連絡をする時は、主に電話を使用することになると思います。

電話は相手の顔が見えない為、話し方で印象が変わります。言葉遣いやマナーには注意する必要があります。

電話連絡の時の注意ポイント

・電話の前に、あらかじめ話す内容メモにまとめ、分かりやすく簡潔に伝える

・始業後、昼休み、終業直前、終業後、の時間に電話することは避ける

・携帯電話の場合、騒がしい所を避け、電波の良い静かな環境で電話をする

・電話越しでは声が少し低く聞こえてしまう為、普段より少し高めの声を出す

・まず自分の名前を名乗り、相手の名前や部署を伝えて取り繋いでもらう

・長い話となる場合「お時間大丈夫でしょうか」と相手の都合を確認する

・メモを用意し、ペンを利き手、電話を逆の手で持ち、都度必要な情報をメモする

・聞き取りづらい時には「申し訳ありませんが、お電話が遠いようです、もう一度お聞かせいただけますか」と伝え、しっかりと聞き取りましょう。

○会社との連絡を行う場合のマナー(メール・郵送・FAXなどの書面)

基本的には電話と同じように、内容を分かりやすく簡潔に伝える必要があります。

書面の場合は、内容のミスをチェックする時間があります。ミスの無いように念入りに確認を行いましょう。

書面連絡の時の注意ポイント

・書面を見直して、誤字や脱字が無いか必ず確認を行いましょう

・宛先に間違いが無いか確認を行いましょう

・本文については、読みやすいように適切な位置で改行を行いましょう。

・メールの場合は、件名を簡潔に記載して、誰が見ても内容が分かるようにしましょう

・メールやFAXの場合、送信する時間帯は業務時間内に送りましょう

○実際に会社を訪問する場合のマナー

入社してから、他の会社を訪問する時には、自分の会社の代表として、訪問先で失礼の無いように振る舞う必要があります。特にマナーには気を付けましょう。

内定をもらってから、入社手続きで会社に行くこともあるはずです。ぜひその時から実践しましょう。

約束の訪問時間を守りましょう

社会人として時間を守るのは基本ですから、訪問の時には時間に余裕を持ったスケジュールを組むべきでしょう。しかし、あまりに早い時間の訪問は相手に迷惑であるので、5~10分前を目安に訪れるように心掛けましょう。

万一不測の事態で遅れてしまう時は、遅れてしまうことが分かった時点で、お詫びと理由、到着予想時刻の連絡をすぐ行いましょう。

時間を守るのは最低限守りたいマナーです。ビジネスにおいては「時間にルーズな人」への信頼はゼロに等しいものです。社員一人の数分の遅刻でさえも、会社全体のイメージを下げる要因になるかもしれません、十分注意しましょう。

また、冬場なら会社の入り口の前でコートを脱いでおきましょう。

どなたへの挨拶も自分から積極的に

自社・他社問わず、社員の方とすれ違ったら、元気よく挨拶を行いましょう。挨拶は会社内でのコミュニケーションの基本です。元気の良い挨拶が出来る方は、入社した後に上司や同僚はもちろん、取引先とのコミュニケーションが円滑に進みます。

もちろん自分に関わりの無い社員の方以外にも、掃除をしている方や受付の方にも、元気よく挨拶を行うべきです。

自分に関わりの無い方への挨拶の有無や対応は、その人の考え方や性格が出ます。

自分と関わりのある方だけに挨拶をするという対応は、ビジネス以前に、「あの人、担当者に会う時は感じの良い対応なんだけど、掃除のおばちゃんには不愛想で、挨拶すらしないんだよ・・・裏表のある人だな・・・」、というように、自分の気付かないうちに、悪い評価を受けてしまう危険があります。

良い対応も悪い対応も、必ず見ている人はいますし、必ず会社に知れ渡ることになります、常に元気の良い挨拶をしましょう。

※お辞儀のポイント

お辞儀をして感謝の気持ちを伝える場合は、頭だけ下げるのではなく、背筋を伸ばし、腰より上の上半身を折るようにお辞儀をしましょう。また、視線は足元から2m先を見るようにしましょう。

また、面接の時の挨拶はより丁寧な【分離礼】が良いでしょう。

・【同時礼】
お辞儀をしながら「おはようございます」「こんにちは」などの挨拶の言葉を言います
すれ違った方への挨拶はこちらで十分でしょう。

・【分離礼】
「よろしくお願いします」などの挨拶の言葉の後にお辞儀をします
より丁寧な挨拶となります、会社訪問の時や、初対面の方への挨拶はこちらをオススメします

私語は慎みましょう

会社の中では、仕事の電話をかけている方や打ち合わせをしている方などが必ず居ると考えましょう。

そのような方々に迷惑のかからぬよう、大きな声で話したりすることは避けるべきです。

会社のトイレやフロントに、取引先など会社外部の人が居る場合もあります、そのような場所では仕事の話など、不必要な話をしないよう注意しましょう。

名刺を受け取る時は注意しましょう

ビジネスの場では、“名刺は相手の分身”と考えられており、丁寧な扱いをする必要があります。

名刺を差し出された時は、基本的に立って、両手で受け取りましょう。この時に、名刺に記載されている名前や、会社の名前・ロゴを指で隠してしまわぬよう注意しましょう。また、受け取る時には、「頂戴いたします」と一言添えるべきでしょう。

名刺交換の注意ポイント

・テーブル越しに名刺は受け取ってはいけません、必ず何もない所へ移動しましょう

・相手が差し出した名刺の高さより、低い位置で名刺を差し出しましょう。

・複数名での名刺交換では、一番格上の人から名刺交換を行います。

・受け取った後に、その部屋で打ち合わせをする時には、椅子に座るタイミングで、自分から見て左手側の机の上に、名刺入れの上に乗せた状態で置きましょう、

※複数名から名刺を受け取った場合、席順に名刺を並べましょう

※その場合、一番格上の方の名刺だけ、名刺入れの上に置きましょう

・置いた名刺は、打ち合わせが終わったタイミングで、名刺入れにしまいましょう。

ビジネスの場にふさわしい丁寧なコミュニケーションを

会社員は常にコミュニケーションの力を見られていると考えましょう。話す内容はあらかじめ整理してまとめ、自分自身で理解しておくことがポイントです。

ビジネスの場で求められるコミュニケーションの力は基本的にこの3点です

・要件を簡潔に、かつ正確に伝えることが出来るか

・相手を敬う言葉遣いが、どのような立場の人に対しても出来るか

・相手の伝えたいことを聞いて、正確に理解出来るか。

話を聞くときには、メモを取れる況でしたら、話を聞きながらメモを取りましょう。分かったつもりになっていても、聞き漏らしや理解不足の危険があります。疑問や不明な点がある場合は、うやむやにせず、その場で質問をしましょう。

最後に

これから民間企業で働くことをお考えの方は、ぜひ参考にしてみてください。

その他、会社・業界とそれぞれに異なるマナーがあることも考えられます。

ルールはルール、マナーはマナーと認識した上で、基本マナーに縛られ過ぎないで、常に失礼のない対応を心掛けるとよいでしょう。