自衛官の再就職|求人票に記載されている休日・休暇とは
民間企業では、休日や働き方について労働基準法と呼ばれる法律によって、定義が定められています。
自衛隊は、長期休暇制度が充実している反面「有事の際はいつでも基地・駐屯地に駆け付ける」という働き方が基本である為、民間企業に定められている労働基準法のルールの適用範囲外の働き方でした。
いままで自衛官として働いていた方の場合、民間企業での休み方が自衛隊の頃と違い驚く人もいます。
民間企業の休日に、法定休日と、法定外休日の2つがあります。
休日とは、もともと労働義務の無い日であり、申請せずに休む事が出来る休みです。
また、似たものに法定内休暇と法定外休暇というものもあります。
休暇とは、もともと定められていた出勤日が、申請によって労働義務が免除され休みになることです。
これらの休日・休暇については、求人票に記載されていますので、それぞれの休日・休暇の意味や休み方について、一つ一つ解説していきます。
1.法定休日と法定外休日とは
2.週休2日制・完全週休2日制とは
3.有給休暇とは(法定休暇)
4.パート・アルバイトの有給休暇とは
5.有給休暇は自由にとれるのか
6.特別休暇とは(法定外休暇)
7.業界や企業規模によって休み方や休日の考え方は違う
8.まとめ
1.法定休日と法定外休日とは
民間企業で働く上で、休日について、労働基準法によって下記のように定められています。
【労働基準法・休日についての決まり】
・週に1回は休みがあること
・4週間の中で4日の休みがあること
また、労働時間について下記のように定められています。
【労働基準法・労働時間についての決まり】
・1日の労働時間は8時間まで
・1週間の労働時間は40時間まで
例えば、1日8時間の仕事を月曜日から金曜日まで働くと合計で40時間になり、土日を休みとすると労働基準法のルールに収まった働き方となります。
図で解説すると、1日8時間勤務で月曜日から金曜日まで働いた場合、残りの土日が休日となります。
このうち1日を法定外休日、もう1日が法定休日となります。
法定休日は法律で定められた休日なので、基本的に休みとなりますが、法定外休日は会社が独自に定めた休日なので、下記のような場合も考えられます。
この場合、土曜日が休みではなく、通常出勤ですが、
・労働時間が週40時間に収まっている
・週に1日休み(法定休日)がある
という事からこの働き方は合法です。
※36協定と呼ばれる労使協定を締結していれば、1日8時間・週40時間を超える残業が許されます。
ほとんどの企業が36協定を締結しています。
※休日に出勤した場合の給与などは、下記のページで解説しています。
参考ページ:自衛官の再就職|民間企業の残業の基礎知識と応募前のチェックポイント
民間企業では週2日程度の休日があるイメージですが、会社の規模が非常に小さい、会社設立から数年程度という場合、法律の最低限度である、週1日の休日or4週で4日の休日しかないという、週休1日制を取り入れている割合が多くなる傾向にあります。
実際にどの程度休めるのか、確認する方法は下記の項目にて解説します。
2.週休2日制・完全週休2日制とは
求人票には休日に関する記載が必ずあります。
例えば、1年間の休日数を表す【年間休日】の欄は、日数が多い程休日数が多いので分かりやすいのですが、求人票に記載されている、
・完全週休2日制
・週休2日制
という2種類の休み方に関しては、勘違いの多い項目なので詳しく解説します。
参考ページ:自衛官の再就職|年間休日125日?製造業の休日の特徴とは
完全週休2日制
完全週休2日制とは、
・1週間のうちに必ず2日休みがある
という働き方を表しています。
週に2日休みがありますが、必ず土日休みがあるという訳ではありませんので、休日が平日のみという事も考えられます。
「週2日の休みは土日である」というイメージがあると思いますが、民間企業の場合は、取引先や業務に合わせて休む事になります。
土日休みが希望の場合は、求人票に【完全週休2日制】と記載されている場合であっても、休日のスケジュールの確認は必要です。
週休2日制
週休2日制と聞くと、毎週2日休みがあるように思われますが、そうではありません。
週2日の休みが月に1回でもある場合、週休2日制と呼びます。
例えば月に一回、週2日の休みがあり、その他の週が全て週1日の休みであっても、週休2日制となります。
上記のように、完全週休2日制と、週休2日制の内容には大きな違いがあります。
土日休みが希望の場合は、完全週休2日制(土日)と記載のある、土日休みがしっかりと設定されている求人を探す必要があります。
3.有給休暇とは(法定休暇)
自衛官と同じように民間企業にも有給休暇があります。
有給休暇も労働基準法によって定められている内容ですので法定休暇のひとつです。
下記の条件を満たすかたであれば、入社してからの在籍年数に応じて有給休暇が付与されます。
・入社してから6カ月以上経過している
・契約上の全労働日の8割以上を出勤している
下記の表は法定通りの最低付与日数です。
勤続年数 | 6カ月 | 1年6カ月 | 2年6カ月 | 3年6カ月 | 4年6カ月 | 5年6カ月 | 6年6カ月 |
付与日数 | 10日 | 11日 | 12日 | 14日 | 16日 | 18日 | 20日 |
※週30時間以上勤務または週5日以上勤務(正社員)の場合
入社後6カ月目のタイミングで有給休暇が付与され、その後在籍年数に応じて付与される日数が増えていきます。
付与される日数は20日で最大となり、この場合、7年目以降は毎年20日の付与となります。
このうち、10日以上の有給休暇が付与される場合、年に5日以上の有給休暇を取得させる事が会社に義務付けられている為、正社員など、フルタイムで働く方であれば毎年5日以上の有給休暇を取得する事になります。
この有給休暇は【年間休日】に含まれない為、民間企業で実際に休む事の出来る年間の休日数は、
【年間休日+有給休暇(5日~)】となります
再就職する民間企業が有給休暇の取得しやすい企業であれば、有給休暇を全て使う事も出来ます。
※有給休暇の時効は2年なので、付与されてから2年を超えたタイミングで消滅してしまいますので、最大でも40日です。
4.パート・アルバイトの有給休暇とは
自衛官定年後の再就職で、パート・アルバイト勤務を考えている方向けの説明です。
下記の条件を満たす方であれば、パート・アルバイト勤務の場合も、有給休暇が付与されます。
・入社してから6カ月以上経過している
・契約上の全労働日の8割以上を出勤している
週1~4日程度勤務するパート・アルバイト勤務の場合は、週の出勤日数によって有給休暇が付与される日数が変わります。
これを比例付与と呼び、1年間の労働契約書に記載されている基本の出勤日を計算して有給休暇が付与されます。
パート・アルバイト勤務であっても、週30時間以上または週5日以上働いている方の場合は、上記で説明した正社員の有給休暇と同じ日数の付与となります。
有給休暇も法律で定められた法定休暇の仲間ですが、週の出勤日数に応じて変化があります。
5.有給休暇は自由にとれるのか
有給休暇は事前に申請をする事で、基本的に自由に取得する事が可能です。
ただし、事業の正常な運営に影響が出る場合には会社が有給取得の時期を変更してもらうよう打診する事があります。
これを会社の時季変更権と呼びます。
・特定の社員が担当している仕事の納期が近い
・社員が一斉に有給を申請していて、店に人が居なくなってしまう
など、事業の正常な運営に影響が出る場合、有給を申請した社員に対して「有給の取得時期をずらしてくれないか」と打診する事が認められています。
会社の時季変更権に強制力は無いので、有給取得の希望は基本的に認められますが、状況により会社側から時季変更の打診を受ける事が考えられます。
※有給休暇の平均取得日数
有給休暇の日数は、会社の規模によって有給取得率に違いがあり、社員数が多い企業では有給の取得率が高い傾向にあります。
また、業種によっても取得率に違いがあり、サービス業などでは有給休暇の取得率が低い傾向にあります。
再就職活動において、有給を取りやすい環境を求めている場合などは、会社の担当者や援護担当者を通じて有給取得率をチェックする事以外にも、
・希望する業界の有給取得率
・希望する会社の企業規模
などを事前に知っておくことで、休暇の取得のしやすさを想像する事が出来ると言えます。
※その他の法定休暇
有給休暇以外にも、育児休暇・介護休暇などがあります。
参考ページ:育児・介護休業法のあらまし|厚生労働省
6.特別休暇とは(法定外休暇)
特別休暇とは民間企業が独自で設定している休日であり、法定外休暇と呼ばれるものです。
有給休暇が法律で定められているのに対して、特別休暇は法律による定めがありませんので、各企業の就業規則の内容によって、日数や取得の条件などに違いがあります。
特別休暇の中で、下記のものが有名です。
・夏季休暇
・病気休暇
その他、変わったものには
・ボランティア休暇
・リフレッシュ休暇
などがあります。
特別休暇を定めている企業は59%となっており、法律で定められている休暇以外に休暇を定めている企業は過半数となっています。
また、特別休暇の中で多く使われているのは、夏季休暇(お盆休み等)、病気休暇となっており、その他、リフレッシュ休暇、ボランティア休暇と続きます。
夏季休暇など、自衛官であれば当たり前のように取得できる休暇についても、法律で定められていない法定外休暇となる為、対応は会社によって大きく違いがあります。
夏季休暇(特別休暇)
特別休暇がある企業のうち、42.9%の企業が夏季休暇を取り入れています。
夏季休暇期間の売り上げが大きいサービス業などでは、夏季休暇が短い・他の時期に休暇を取るという事はありますが、工場などでは夏季休暇中に工場全体の生産設備をストップさせる為、長めの夏季休暇となる傾向があります。
参考ページ:自衛官の再就職|年間休日125日?製造業の休日の特徴とは
参考ページ:平成 31 年就労条件総合調査の概況 – 厚生労働省
病気休暇(特別休暇)
特別休暇がある企業のうち、25.7%の企業が病気休暇を取り入れています。
業務外のケガや病気で仕事を休む際に、使用します。
休職期間は会社によって、数日から半年程度・1年程度と幅があります。
業務中のケガ、業務が原因の病気については、休業補償や労災保険によって休みや賃金が保証されていますので、病気休暇を使う事はありません。
※業務中のケガ・業務が原因の病気は労災で処理する必要があります。
参考ページ:【5分で分かる】自衛官が再就職の前に知っておくべき社会保険の話
民間企業の病気休暇は法律で定められている項目ではありませんので、休暇中の給与が支払われるか無給かは、会社の就業規則によって定められています。
リフレッシュ休暇(特別休暇)
特別休暇がある企業のうち、13.1%の企業がリフレッシュ休暇を取り入れています。
夏季休暇や病気休暇に比べると取り入れている会社は比較的少ない状況です。
リフレッシュ休暇の日数は会社の就業規則の内容によって違いがありますが、勤続3年目は5日、勤続5年目は10日など、数年ごとに休暇が付与される事が多いようです。
大企業であれば、リフレッシュ休暇を採用している場合もありますが、中小企業で取り入れている会社は少ないです。
ボランティア休暇(特別休暇)
ボランティア休暇を取り入れている企業は少なく、4.5%となっています。
数か月程度の災害援助ボランティアを始め、年数回の地元の消防団の活動などで使用することの出来る休暇です。
ボランティア休暇は、大企業を中心に採用されており、中小企業などでの採用実績はまだ少数と言えます。
社会貢献活動に力を入れている会社で、採用されている事が多いです。
7.業界や企業規模によって休み方や休日の考え方は違う
自衛官として長く働いた方であれば、「土日は基本休み、夏季や年末年始は長期連休」というイメージをお持ちかと思います。
ですが、休むタイミングや休み方は、業界によって違う場合があります。
例えば、警備業やサービス業の場合は、曜日関係なく現場での仕事がある事から、土日や連休というタイミングに合わせず、シフト制での勤務になる場合が多く、学校教育などに関わる業界など、取引先の勤務スケジュールに左右される業界の場合は、取引先が閑散期の時に、休暇が取りやすいという事もあります。
また、工場などでは、祝日などの休みを、夏季休暇などに合わせて、10日程度の休暇を取る場合が多いです。
企業規模が大きい会社であれば、誰かが休んだ分をカバーしやすい環境であるため、休暇が取りやすい環境であると言えますが、企業規模が小さい場合、一人でも休んでしまうと業務に大きな支障が出るという事があります。
年間休日の日数や、休暇制度に同じものがであったとしても、業界や企業規模によって、
・実際に取得できるのか
・取得しやすい環境なのか
という事に大きな違いがあると言えます。
参考ページ:自衛官の再就職|年間休日125日?製造業の休日の特徴とは
休暇の取得のしやすさに関しては、実際に働くまで分からないものですが、求人に応募する段階で担当者に聞いておくと良いでしょう。
定年退職や任期満了が控えている現職の自衛官の方であれば、援護担当の方が企業に職場見学の打診をしてくれますので、相談しておくべきでしょう。
参考ページ:再就職方法の比較|自衛隊の基地援護室を活用するメリットとは
8.まとめ
会社の休暇制度に関しては、入社前に把握する事が出来ます。
しかし、求人票や雇用契約書に記載されているからといって、実際に休暇を取得出来るかどうかは、会社によって差があります。
ライフワークバランス良く、長く働き続ける事の出来る仕事を探す為には、給与以外に休日・休暇の側面からも確認が必要と言えるでしょう。
参考ページ:自衛官の再就職|求人票の見方と注意するポイント