再就職に関して事前に家族と話しておくべき理由とは?(定年自衛官の方向け)
自衛官が定年後の再就職先を決めるときには、給与・待遇・仕事の内容などの条件について、事前に調べたうえで再就職活動を進めていく事が大切です。
また、家庭を持っている人の転職活動においては、家族の理解を得られているか、という事も大切です。
自衛官は公務員という立場なので、雇用が安定していて、社会保険や手当などが完備されている為、家族としては今まで安心して生活する事が出来ていました。
ですが、家族は民間企業へ転職するという変化に対して、
「再就職先の企業は安定しているのか」
「残業が多いのではないか」
「今までと生活スタイルが大きく変わるのではないか」
など、再就職に関して少なからず不安を抱いているはずです。
再就職とは人生の中でも大きな転機の一つと言えます。
再就職先を決めるにあたり、家族と相談せずに全て自分で決めてしまうと、最悪の場合、内定が出たのに家族の理解が得られず辞退する、という事にもなりかねません。
ここでは、次の6つのポイントについて紹介します。
1.再就職について家族と話しておくべき理由
2.家族に対してやってはいけないこと
3.理想的な再就職活動の進め方とは
4.実際に家族が気にしている4つのポイントとは
5.家族が心配している事柄についても、再就職前に解消しておく
6.まとめ
1.再就職について家族と話しておくべき理由
自衛官は階級ごとに定年年齢が定められています。
自衛官として長く勤務する中で、
・再就職活動を行う隊員の様子を見た
・定年退職をする先輩を送り出した
という経験も多くあると思います。
また、既に自衛官を退職した方の様子や待遇について、知り合いを通して聞く事があり、定年を数年後に控えた方でなくても、
「早めに再就職活動するほうが良さそうだ」
「〇〇の資格が再就職で強みになるようだ」
「再就職先の給与は〇〇万円位らしい」
など、再就職について少しは情報が入ってきているのではないでしょうか。
このように、自衛官であれば、再就職の様子を見聞きすることもある為、再就職活動を始める時であっても、ゼロからではなく、少し理解した状態からスタートとなります。
ですが、自衛官の家族の場合、実際に退職する自衛官や、再就職後の様子や待遇を知る機会はほとんどありません。
このように、家族の方は再就職についてイメージが湧いていないので、
・再就職活動そのもの
・再就職先での待遇
など、心配になるはずです。
退職を控えた自衛官の方は、家族の心配を取り除くためにも、再就職について説明をしておく必要があるのです。
2.家族に対してやってはいけないこと
再就職活動において、家族に対してやってはいけないことは
・内定が取れてから、初めて家族に相談をする事
・再就職活動について、すべて自分で決めてしまう事
という2つです。
まだ結婚しておらず両親が元気である、という20代・30代の方の場合は、転職活動において自分さえ納得出来ればどのような会社に入社しても問題はありません。
ですが、自衛官定年後の再就職の場合は若い頃と違って、
・両親の面倒を見る必要がある
・子供が小さく、育児にまだ手がかかる
・持ち家がある
・ローンが残っている
などの理由から、仕事の変化が家族全員の生活の変化に直結することが考えられます。
定年後の再就職については家族全体の状況も考えたうえで、再就職先を選ぶ必要があるため、自分一人が納得さえすれば自由に決められるという状況では無く、家族に対しての相談は必須と言えるでしょう。
3.理想的な再就職活動の進め方とは
再就職を行う上でやるべきことは、
・家族へ相談する
・再就職活動の進捗を話す
上記2つが重要と言えます
家族へ相談する
ここで言う家族への相談とは、
・内定が決まってから入社すべきか相談する
・応募する企業を決めてから家族にする
ということではなく、
定年退職が数年後に控えた段階から、再就職について家族と話し合っておく、という事です。
その際、現在の家庭の状況だけを考えるだけではなく、
・両親の介護
・子供の独立
・ローンの支払い
など、数年後の家庭の状況なども考慮に入れて話し合っておくべきと言えます。
例えば、
「仕事が厳しくても月給は高い方が良い」と考えている方であっても、ローンの支払いが近いうちに終わるのであれば、わざわざ給与の良い厳しい仕事に就職せず、家庭を重視する働き方が出来るかもしれません。
また、「残業に慣れているから、残業の多い仕事でも良い」と考えている方であっても、家族が「仕事が変わるタイミングで、家に帰る時間が早い仕事に変えてほしい」と、考えていることもあります。
自衛官定年後の働き方については、家族の希望や状況などを十分に把握し、家族の求める働き方についても知ったうえで、再就職活動を進めるべきでしょう。
再就職活動の進捗を話す
再就職活動の最中には、
・求人票を見て仕事を検討している段階
・職場見学の段階
・面接の段階
などのタイミングで再就職活動の進捗を家族に話しておくべきです。
家族が、好きなように決めていいと言っている場合であっても、いざ求人の内容について説明すると「シフト勤務は避けてほしい」、「残業は少なめにして欲しい」など、本音が出てくる場合もあります。
再就職について家族と話すことによって、「定年後は全く違う仕事にチャレンジしてみたい」など、自分の希望している働き方を伝えることも可能であり、再就職に関する家族の本音を確認する事も出来る為、再就職した場合の待遇などについても詳しく話しておくと良いでしょう。
また、求人票には
・勤務時間
・残業時間
・休日
・業務内容
・手当
など、働き方が想像出来る多くの情報が載っている為、求人票を家族に見せて相談しておくことで、選考が進んだ段階で家族から反対される、という事を防ぐ事が出来ます。
参考ページ:自衛官の再就職|求人票の見方と注意するポイント
職場見学などした時にも、家族に何も話さないのではなく、
・職場の雰囲気
・職場の50代の社員の様子
・自衛官OBの様子
などを家族に話し、実際に働いた時の様子をイメージしてもらう事も重要です。
※全て自分で決めてよいと言われたら
家族に相談しても、再就職先を選ぶのは自分で決めていい、と言われている方もいらっしゃると思います。
そのように言われたとしても、
・希望している業種、仕事内容
・再就職先での予想月給
・働き方(日勤・夜勤・シフトなど)
・待遇(手当て・福利厚生)
など、再就職先での待遇と、自分の考えを最低限伝えておくと良いでしょう。
全て自分で決めて全く話さない場合、内定が出てから家族に反対される事も考えられますので、相談しないとしても、最低限自分の考えだけは伝えておくべきと言えます。
4.実際に家族に話しておくべき4つのポイントとは
家族が心配していることは、再就職に伴う下記の4つの事柄についてです
・年収の変化と若年給付金の給付について
・雇用形態の変化と雇用契約について
・異動の有無について
・生活リズムの変化と、変化の許容範囲について
年収の変化と若年給付金の給付について
再就職先の給与に関しては一番気になる事だと思いますが、月収40万円程度の曹長であっても、再就職先では月給20~25万円程度になる事がほとんどです。
稀に、現職の時の給与水準を維持したまま、再就職出来る方もいらっしゃいますが、
・特殊な技能や資格を取得している
・現職の時のスキルがそのまま生かせる仕事である
・顧問や管理者として再就職する
という場合であり、ごく一部の方のみと言えます。
年収が下がったとしても、自衛官には退職金とは別に「若年給付金」と呼ばれる、一般企業の定年年齢より数年若く退職することで下がる年収をカバーする給付金が支給されます。
月給20万円以上の仕事であれば、今までの生活水準は維持できると言えます。
参考ページ:退職金・若年給付金で老後は安心?|自衛官定年後に減る収入
参考ページ:自衛官の再就職|「年収が下がるのはちょっと…」と考える人の3つのリスク
再就職後の給与や手当の額について、自分と家族の想像している金額と大きく違う場合、給与が減る事に対して家族から反対され、再就職がうまくいかないという事にもなりかねません。
再就職活動をする時には、家族に対して、
現職の時より給与は下がるけれど、給与減の補填として、退職金とは別に若年給付金が支給される
というポイントを事前に家族に伝えておき、理解してもらったうえで再就職活動を進める事が望ましいです。
雇用形態の変化と雇用契約について
士を除く自衛官の方であれば、基本的に定年まで働き続ける事が出来ます。
民間企業も同様に、正社員であれば原則として雇用の期間に定めなく、企業が定めた定年まで働き続ける事が出来ます。
ですが、契約社員やパートなど、期間の定めがある働き方をする場合は、事前に定められた6カ月~1年程度の契約を更新しなければ自動的に退職となってしまいます。
「正社員より契約社員の方が月の月給が高い」など、契約社員の求人には魅力的なものも多いですが、あくまで期間の定められた働き方であり、給与以外の待遇に違いがある場合もあります。
参考ページ:自衛官の再就職|契約社員で失敗しない為のチェックポイント
家族としては、自衛官を定年退職後、再就職先の企業で60歳定年まで長く働けるものと考えています。
ですが、契約社員として働く場合は、契約更新のタイミングで待遇が変わったり、最悪の場合仕事が無くなるという事も考えられます。
正社員以外の雇用形態を選ぶ場合は、
・契約更新について
・待遇について
まず自分で求人の内容について把握をしたうえで、契約を更新出来なければ退職になってしまうというリスクなどについても、ある程度家族に知っておいてもらうことで、いざという時の不安が緩和されるでしょう
参考ページ:自衛官の再就職|契約社員で失敗しない為のチェックポイント
異動の有無について
持ち家がある方などは、勤務地にこだわった再就職活動を行う事も考えられます。
再就職先の企業を選ぶ際に、「ある程度規模が大きく、安定している企業が良い」と考えている方が注意すべき事は、そのような企業は売り上げも多く営業所や拠点がいくつもあることから、異動の可能性があるという事です。
自衛官は基地・駐屯地間の異動が多いこともあり、「現職の時は異動が多かったので、家族は異動に慣れているだろう」と、決めつけてしまう事も良くありません。
もしかすると家族は、「現職の時の異動は仕方がないけれど、再就職後は一緒にいたい」と考えている事もあるからです。
参考ページ:自衛官の再就職|契約社員で失敗しない為のチェックポイント
両親が高齢であったり子供がまだ小さいなどの場合、家族にとっては年収より、異動が無い仕事の方が理想的であると考えている事もあります。
異動に対しての自分の考えと家族の考えが違う場合、再就職先で異動の内示が出てから、家族に反対されてしまうという事にもなりかねません。
再就職活動を行うまえから、子供や両親を見る事や、家庭の状況などを考えて家族と相談を行い、勤務地・異動について、どの程度対応できるかについて把握しておくべきでしょう。
生活リズムの変化と、変化の許容範囲について
夜勤やシフト勤務など、勤務スケジュールが現職の時と変わる場合には、今までとは違った生活リズムになる事も考えられます。
生活リズムが変わると、必然的に家にいる時間帯が変わり、家庭内の家事や育児の分担など、見直しが必要になります。
両親の介護など、今後数年で家庭の状況が変化する可能性がある場合には、それらも考慮したうえで、
・生活リズムが変えられるのか
・変えられる場合、どの程度までなら可能か
ということついては、家族とよく話し合っておくべきでしょう。
5.家族が心配している事柄は再就職前に解消しておく事が大事
検討している仕事について家族と相談を行う中で、
「経験の無い仕事をすることが心配」
「50代で続けられるか心配」
など、再就職先での仕事について、家族から心配されることもあるはずです。
家族が懸念している心配事については、
「なんとかなる」
「自分で決めたから大丈夫」
など、理由も無く答えるのではなく、
家族が懸念している事項に関しても、事前に応募を検討している企業側に確認しておくと良いでしょう。
逆に答えられないようであれば、会社の調査が足りないということかもしれません。
現職の自衛官の場合は、企業に聞きにくい事であっても、援護担当の方が企業に聞いてくれるので、活用すると良いでしょう。
参考ページ:再就職方法の比較|自衛隊の基地援護室を活用するメリットとは
6.まとめ
一般的な転職活動の場合は、
・給与アップ
・休日などの待遇改善
などを目標に転職活動を行う為、家族としても、「今より条件が良くなるなら応援する」と、転職活動に理解を示しやすいと言えます。
ですが、自衛官の再就職活動の場合は、条件面が現職の時より良くなるという事は極めて稀であり、補填分の若年給付金があるとしても、月給が下がってしまう事がほとんどです。
また家族は、民間企業への再就職という事に対して、再就職先での待遇や、生活の変化などを少なからず心配しているはずです。
家族に対して、再就職活動についての説明が全く無いまま
「月給は20万円位になる」
「現職の時より給与が下がる」
「今までやったことのない仕事に再就職する」
など、いきなり伝えられたとしても、家族は再就職を応援しにくいと言えるでしょう。
家族の理解があってこそ、定年まで勤める事の出来る仕事に内定を取る事が出来ると言えますので、家族と相談しながら、家族全員が納得できる仕事を探すことが、良い再就職に繋がると言えるでしょう。
参考ページ:転職を繰り返さないために気を付けるべきこと