自衛官の再就職|クレーンの資格・仕事とは
自衛官の中には、既にクレーンの資格を取得していらっしゃる方もいるかと思います。
クレーンの資格は民間企業での需要が高く、資格保持者は再就職を見つけやすいです。
自衛官は退職前に技能訓練(通信教育)を利用して資格を取る事が出来ますので、技能訓練を利用して、未経験からクレーンの資格を取ろうと考えている方も多いと思います。
ここでは資格の紹介、取得までの流れ、クレーンの説明、仕事内容、給与相場など、実際にクレーンの資格を活かして働くまでに気になるポイントを図を交えて説明していきます。
1.クレーン運転資格の紹介
2.クレーンの資格が必要とされる理由
3.クレーンの大きさとは
4.クレーンの種類と必要な資格
5.クレーン資格の取得方法
6.クレーン免許の教習について
7.クレーン免許が活かせる所と仕事内容
8.クレーン免許の取得メリット・給与
9.さらなるスキルアップの為には
10.クレーン求人のチェックポイント
11.まとめ
1.クレーン運転資格の紹介
クレーンの大きさや種類によって必要な資格は下記の3つに分類されます。
・免許
クレーン・デリック運転士
クレーン・デリック運転士(クレーン限定)
クレーン・デリック運転士(床上運転式限定)
移動式クレーン運転士
揚貨装置運転士
・技能講習
小型移動式クレーン運転技能講習
床上操作式クレーン運転技能講習
・特別教育
小型移動式クレーン特別教育
クレーン運転特別教育
デリック運転特別教育
教習所で教習を受けて取得する【免許】
講習を受けて技能講習修了証を取得する【技能講習】
特別教育を受けて特別教育修了証を取得する【特別教育】
の3種類があります。
免許>技能講習>特別教育の順で、扱えるクレーンのサイズが大きくなると考えると分かりやすいです。
自衛官が退職前の技能訓練で取得するクレーン資格は免許であることから、下記では主に免許についての説明をしていきます。
クレーンの資格を履歴書に書く時には
・免許の場合
【令和〇年〇月 ○○クレーン運転士免許 取得】
・技能講習の場合
【令和〇年〇月 ○○クレーン運転技能講習 修了】
・技能講習の場合
【令和〇年〇月 ○○クレーン運転技能講習 修了】
資格によって運転できるクレーンの大きさに違いがあるので、記載は間違えないようにしましょう。
2.クレーンの資格が必要とされる理由
クレーンを使用した荷物の吊り上げは、労働安全衛生法で有資格者が作業しなくてはならないと定められていますので、無資格者が作業すると違法になります。
クレーンを使う職場には、資格を持った人が必ず必要になりますので、クレーン資格の所持者は、未経験者に比べて再就職を有利に進められると言えます。
3.クレーンの大きさとは
クレーンの大きさを判断する際に、自動車のように車両の重さや大きさなどで区別せず【つり上げ荷重】と言う、「最大何トンの荷物をつり上げられるか」で判断します。
町でよく見るクレーンのサイズとは

町でよく見かける移動式クレーンを例に、クレーンのサイズを解説します。
工務店などで使用されている、トラックにクレーンが付いているタイプはつり上げ荷重3トン程度です。
工事現場などで見かける、タイヤの大きなクレーン車の場合はつり上げ荷重20トン程度です。
このようにクレーンの腕(ブーム)の太さによって、つり上げ荷重に差がある事が分かります。
※0.5トン未満のものは法令上クレーンの扱いにはならない為無資格でも操作が可能です
4.クレーンの種類と必要な資格
クレーン

動力を使用して5t以上の荷物をつり上げ、水平に運搬できる機械の事をクレーンと言います。
建設現場などでよく見る一般的なクレーンなので、想像しやすいと思います。
ここではクレーンにタイヤなどが付いていない、自走で移動出来ないタイプの事を指しています。
建設現場から工場まで幅広く使用されています。

つり上げ荷重5t以上のクレーンは【クレーン・デリック運転士】【クレーン・デリック運転士(クレーン限定)】の免許が必要です。
0.5t~5t未満の小型クレーンの場合は【特別教育】を受けるだけで運転が可能です。
クレーン運転の求人は建設系を中心に、月給25万円~程度の求人が多くあります。
職場でクレーン作業だけを行うイメージですが、クレーン作業と共に建設現場の補助作業を行ったり、工場での作業補助もするという働き方を求めている会社も多くあります。
クレーン(床上運転式)

天井などの高い所に設置されているクレーンであり、レールの設置されている範囲で縦横自由に荷物を移動させる事が出来ます。
クレーンから伸びているボタンを操作し運転する場合と、クレーンに運転席が付いている場合の2種類あり、クレーンの移動と共に運転者も縦に移動します。
工場や造船所などで、手では運べない重量物を扱う所で活躍しており、工場の天井に設置されていることから天井クレーンと呼ばれています。

つり上げ荷重5t以上のクレーンは【クレーン・デリック運転士】【クレーン・デリック運転士(床上運転式)】の免許が必要です。
0.5t~5t未満の小型クレーンの場合は【特別教育】を受けるだけで運転が可能です。
床上運転式クレーンの求人数は工場などを中心に、月給20万円~25万円程度の求人が多くあります。
床上運転式クレーンは工場などに設置されており、扱う製品が重い場合の移動を行います。
なのでクレーンの仕事だけを行うパターンは少なく、基本は工場での製造やメンテナンス等の仕事をして、必要な時に床上運転式クレーンを動かすという働き方になります。
移動式クレーン

クレーンの下部にタイヤやクローラーが付いており、自走で移動が出来るタイプのクレーンです。クレーン車と呼ばれている物です。
クレーンが必要とされている所に自走で移動し、荷物の吊り上げなどを行います。
吊り上げる荷物の重量や道路状況に応じて、準備するクレーンを変える事が出来ます。
移動する事が出来る為、建設現場などクレーン作業が終わった後に撤収する場合に多く使われています。

・つり上げ荷重5t以上のクレーンは【移動式クレーン運転士】の免許
・つり上げ荷重1~5t未満のクレーンの場合は【小型移動式クレーン】の技能講習
・つり上げ荷重0.5~1t未満のクレーンの場合は【小型移動式クレーン】の特別教育
が必要です。
建設現場から工場まで、非常に多くの需要があり、求人数は多いです。
デリック

クレーンとほとんど変わらない働きをしますが、ブームの操作をワイヤーの巻取りで行う物を言います。
港湾や工事現場などで使用されています。
デリック限定の求人はほとんど無く、クレーン・デリック運転士の資格があれば運転が可能です。
陽貨装置
船の上に設置されているクレーン・デリックの事を指します。
船に積んである荷物を陸へ移動させる際に活躍します。
船の上は不安定で操作ミスで転覆の危険があり、陸上でのクレーン・デリック操作と注意するポイントが違う為、クレーン・デリックとは別の物として定義されています。
求人はほとんど出ておらず、資格を取得する方もごく少数です。
クレーン(床上操作式)

※参考:日本クレーン協会
仕組みは床上運転式とあまり変わりませんが、操作方法が違います。
クレーンから伸びているボタンを操作し、荷物の移動と共に運転者も縦横に移動します。
床上操作式クレーンの場合は、技能講習でつり上げ荷重の制限無く操作が可能です。
床上運転式と変わらず工場や造船所など、重量物を扱う所で活躍しています。
床上運転式と同じで、天井クレーンと呼ばれています。

つり上げ荷重5t以上の床上操作式クレーンは【技能講習】で運転が可能であり、免許は不要です。
5t未満の床上操作式クレーンは【特別教育】を受ける必要があります。
工場などで需要があり、求人数は多めです。
クレーン資格は運転士免許に需要がある
いくつか資格を紹介しましたが、
固定式のクレーンでは【クレーン運転士免許】
移動式のクレーンでは【移動式クレーン運転士】
の免許を取得する事で、どの大きさのクレーンでも運転する事が出来ます。
自衛官が退職前の技能訓練で取得するクレーン資格は運転士免許なので、資格を取得していれば、民間企業に再就職する際の大きなアピールポイントになります。
5.クレーン資格の取得方法
前項で説明したようにクレーン資格には
・免許
・技能講習
・特別教育
の3種類があり、種類によって資格取得までの費用や教育期間が違います。
取得する為には、労働局登録教習機関であるクレーンの教習所に通う方法が一般的です。
建機メーカーや社団法人などが、登録教習機関としてクレーンの教習を行っていますが、学科や実技のカリキュラムはどの学校も同じ内容なので、通う教習所を居住地や勤務地の近くで自由に選ぶことが出来ます。
6.クレーン資格の取得難易度
・免許
免許取得の際に、【学科試験】と【実技試験】の両方に合格する必要があります。
ですが自働車免許と同じで、教習所で教習を受けた場合は実技試験が免除になります。
教習所に通わず、安全衛生技術センターで【実技試験】+【学科試験】を受けて一日で取得する方法は取得難易度が高い為、教習所で免許を取得する方がほとんどです。
安全衛生技術センターでの学科試験の合格率は60%程度です。
ある程度勉強をしなければ不合格になると言えます。
教習所で教本をくれたり、書店で試験対策の本も売っている為、対策はしやすいです。
・技能講習
免許取得の際に、【学科試験】と【実技試験】の両方に合格する必要があります。
技能講習は教習所で取得する場合がほとんどです。
学科講習修了のタイミングで【学科試験】
実技講習修了のタイミングで【実技試験】が行われ、そこで合格する事で講習修了証が交付されます。
合格率は90%程度なので、講習を真面目に受けていれば合格できると言えます。
・特別教育
免許取得の際に、【学科試験】と【実技試験】の両方に合格する必要があります。
技能講習と同じく、合格率は90%程度なので、講習を真面目に受けていれば合格できると言えます。
技能講習や特別教育は運転できるクレーンに制限がありますので、これから資格取得を考えている方は、再就職を念頭に考え免許の取得を目指した方が良いでしょう。
6.クレーン免許の教習について

クレーン資格取得の講習時間や金額は、受講者の持っている資格によっては一部の講習が免除される場合もあります。
取得に関しては教習所に通う場合、数日間の講習が必要となりますので、今働いている現場や就職援護の方と相談して日程を決める事になるでしょう。
参考ページ:再就職方法の比較|自衛隊の基地援護室を活用するメリットとは
7.クレーン免許が活かせる所と仕事内容
建設現場はもちろん、工場や倉庫などの重量物を扱う場所で、クレーンの資格を活かす事が出来ます。
作業の内容としては、
・荷物のつり上げ・降ろし
・荷物の移動
・荷物置き場の確保
その他、補助的な作業として
・クレーンのフックに荷物を取り付け・取り外し(玉掛資格が必要)
・伝票のチェック
・受入荷物の処理
などを行う場合もあります。
クレーンと言えば建設現場をイメージしがちですが、工場の中にも天井クレーン等が設置されていますので、再就職先の候補として工場をターゲットにするのも良いと言えます。
クレーンを使用する職場では、有資格者が足りていない状況で、資格があれば未経験でも挑戦可能と言えます。
8.クレーン資格の取得のメリット・給与
クレーン作業者の求人は、他の求人と比べて高めに設定されています。
工場などで正社員として働く場合、無資格の倉庫内作業員として働く場合は、月給18万円位になりますが、クレーン免許を持っていれば、月給25万円以上になる場合があります。
建設系の場合は、仕事が忙しい代わりに30万円以上の給与が支払われる事も珍しくありません。
資格の取得に時間がかかりますが、それだけの価値は十分あると言えます。
9.さらなるスキルアップの為には
クレーン資格と合わせて取得すると良い資格がいくつかあり、入社した後にはこれらの資格を取得したスキルアップも考えられます。
入社後、場合によっては会社から取得を命じられる事も考えられますので、今のうちから知っておくと良いでしょう。
・玉掛技能講習
つり上げ荷重1t以上のクレーンなどを使用して玉掛作業(フックに荷物を取り付ける)をする場合、この資格が必要です。
職場によっては、クレーン作業者が玉掛作業も行う事がありますので、取得していると一人でクレーン作業が可能です。
クレーンの資格とセットで取得する場合が多いです。
また、クレーンを運転するうえで玉掛作業の理解がある事で、クレーン作業を安全・効率的に進めることも可能です。
取得には技能講習が必要です。
・玉掛作業特別教育
上記で説明した玉掛技能講習と違い、【つり上げ荷重1t未満】のクレーンの玉掛作業しか行う事が出来ません。
つり上げ荷重1t未満のクレーンを使用している所は少ない為、玉掛の資格を取得する方は特別教育でなく技能講習を取得している場合がほとんどです。
・フォークリフト技能講習
工場などでは大きな製品をクレーンで動かす他、出荷の際にフォークリフトを使用する場合もあります。
クレーン資格の他、フォークリフト資格を持っていると、クレーンの作業範囲以外の場所へも自分で荷物を運ぶ事が出来ます。
参考ページ:自衛官の再就職|フォークリフトの資格・仕事とは?
公道を走る場合があるか
移動式クレーンの場合、車庫から作業場まで公道を走る事になります。

クレーンの資格はクレーン作業を行う為の資格なので、公道を走る場合はクレーンの大きさに応じて自動車の運転免許が必要です。
・大型自動車免許、大型特殊自動車免許
移動式クレーンを公道で運転する場合、車両の区分に合わせた自働車運転免許が必要です。
普通自動車と同じように教習所で免許を取得する方がほとんどです。
・公道を走る業務があるか
・公道を走る場合、取得している自動車免許で仕事が可能か
などを事前に調べておくと良いでしょう。
10.クレーン求人のチェックポイント
クレーンの仕事は会社によって残業の多い所、休日出勤がある所もあります。
残業時間は基本的に求人票に記載されていますが、実際の残業時間や、繁忙・閑散期の残業時間が求人票に記載された時間と違う場合もあります。
応募や面接の時か、基地援護室の方を通して、日々の残業や繁忙期の仕事量、休日出勤の有無などを聞いておくと良いでしょう。
参考ページ:再就職方法の比較|自衛隊の基地援護室を活用するメリットとは
月給が高い求人でも、昇給の制度が無い場合や、残業が“みなし残業”として月給に既に含まれている為、月給の額が高い場合があります。
クレーンの仕事を長く続けるつもりなら、求人に書かれている月給だけに注目せずに、
・昇給はあるか
・残業代は別途支給か
・賞与はあるか
という事についてはよく確認しておきましょう。
任期制隊員の再就職の場合は
昇給・賞与があり給与が増える見込みのある求人を探すのはもちろんですが、ゆくゆくは社員を管理する立場になれるのかどうか、チェックしておくべきと言えます。
昇給・賞与があったとしても、ずっと現場でクレーンの作業のみを行う場合は、給与が頭打ちになってしまう場合も考えられます。
また、月の仕事量によって給与額の上下が激しく、安定しないという会社もあります。
定年まで長く働く事を考えると、目先の月給だけにこだわらず、管理職の立場になり、給与がさらに上がるステップがあるのか、会社の仕事は安定しているのかなど、よく調べて再就職先を選ぶべきでしょう。
実務経験が無い場合
クレーンの仕事は、実務経験が無ければ採用しない会社もあります。
実務経験が無い場合でも採用される可能性があるか、援護担当の方経由などで事前に聞いておくと良いでしょう。
参考ページ:再就職方法の比較|自衛隊の基地援護室を活用するメリットとは
11.まとめ
クレーンの資格は国家資格でありながら、自動車免許のような更新が不要で、免許の有効期限もありません。
一度取得すれば長く職場で使える資格と言えます。
・クレーンの仕事を定年まで長く続けたい
・他の資格を取ってスキルアップしたい
・ゆくゆくは管理者としてスキルアップしたい(任期制隊員の場合)
など、将来的に自分がどのような働き方をしたいかよく考え、それが叶えられる会社を選ぶべきと言えるでしょう。