自衛官の再就職|ボイラー技士の資格・仕事とは

自衛官は退職前に、職業訓練の一環として、再就職に向けて専門的な資格を取得する事が出来ます。

その一つに、国家資格であるボイラー技士に興味のある方もいらっしゃると思います。

ボイラーは基本的に施設の地下や建物の外など、通常では目に付かない所に置いてあるので、見たことの無い方も一定数いると思いますが、配属される部隊によっては、ボイラーの取り扱い経験がある方もいらっしゃるかと思います。

ボイラーは、

・オフィスビルの空調

・工場

・銭湯

・クリーニング店

などで使用されており、ボイラーが設置されている所にはボイラー技士が必要です。

ボイラー技士は需要が高く、常に有資格者が求められています。

ここでは、ボイラー技士の取り方、仕事内容、給与相場などを、図を交えて分かりやすく説明していきます。

1. ボイラーとは

2. ボイラー技士の仕事内容

3. ボイラーの大きさと必要資格

4. ボイラー技士免許取得方法(講習を受ける)

5. 試験内容

6. 難易度

7. ボイラー技士が求められる求人と給与は

8. 求人のチェックポイント

9. ボイラーを使わない施設もある

10.さらなるスキルアップの為に

11.まとめ

1. ボイラーとは

ボイラーの仕組み

ボイラーとは、石油やガスといった燃料を燃やし、温水や蒸気などの熱エネルギーを取り出す装置です。

取り出した温水や蒸気はビルや病院・公共施設などで、給湯・暖房・加湿・加熱調理・殺菌・洗浄などの用途で使われています。

2. ボイラー技士の仕事内容

ボイラーの技士は、ボイラーの運転や点検などの仕事を行います。

その他冷暖房システム・上下水道設備などのメンテナンス業務を一括して行っている場合もあります。

ボイラー業務に焦点を当てると、下記の業務となります。

・ボイラーの部品清掃

ススによって汚れてしまうノズルなどの掃除

・送気用バルブの操作

正常に燃焼させる為の空気量調整 

・ボイラー起動、停止

燃料、送気バルブの操作

・集じん機・公害防止設備の点検と掃除

排気のフィルター部分の点検、整備

・日誌の記入

蒸気圧・油量・水質・煙の濃度などの計測

・燃料の発注・受入

燃料(軽油・重油)などの管理

燃料が重油や軽油などの油を使用するボイラーの場合は、これらが基本的な業務となります。

ボイラーの燃料で仕事内容も変わる

ボイラーの燃料には様々な種類があります。

・固体燃料(石炭など)

・液体燃料(軽油・重油などの石油)

・気体燃料(都市ガスなど)

・その他の燃料(廃棄物など)

ボイラーの燃料としてよく使われているのは、液体燃料と気体燃料の2つです。

<固体燃料・液体燃料のボイラーの特徴>

・ボイラー内にススが溜まる

・排気ガスに含まれる硫黄が配管を腐食させる危険がある

・排気が汚い為、大型の排気ガス浄化装置が必要

<気体燃料のボイラーの特徴>

・ススがほとんど発生しない

・燃料のガスに硫黄分が含まれていない

・排気ガスがクリーンで、排ガス浄化装置が小型

<その他の燃料のボイラーの場合>

・廃プラスチックや木材などあらゆる燃料がある

・燃料に応じた特殊なボイラーを使用する

油を使用するボイラーは、小まめなメンテナンスや清掃が必要であり、ガスを使用するボイラーに比べて、手間がかかるボイラーと言えます。

3. ボイラーの大きさと必要資格

ボイラーは大きさによって必要な資格が違います。

ボイラーの大きさと必要資格・運転操作について

・簡易ボイラー(無資格)

小規模な事業所や家庭で使用されている、小さなボイラーです。

ボイラーの資格は不要ですので、扱い方さえ覚えてしまえば、誰でも使用する事が出来ます。

・小型ボイラー・小規模ボイラー(特別教育・技能講習)

小規模の事業所や工場、クリーニング店などで使用されているボイラーです。

取扱いにはボイラーの大きさによって、下記の講習を受ける必要があります。

・小型ボイラーの場合【小型ボイラー取扱特別教育】

・小規模ボイラーの場合【ボイラー取扱技能講習】

・ボイラー(ボイラー技士免許)

簡易ボイラー・小型ボイラー以外の大型ボイラーです。

大規模なビルや工場で使用されており、取り扱いにはボイラー技士の免許が必要です。

ボイラー取扱の資格はいくつかありますが、2級ボイラー技士の免許があれば、全てのボイラーの取り扱いが可能です

小型ボイラー・小規模ボイラーに関しては、ボイラー技士の免許を取得する必要は無く、講習や教育を受けるだけで、試験無しで資格の取得が可能です。

ボイラー取扱作業主任者とは

ボイラーの大きさと必要資格・作業主任者の場合

※伝熱面積については細かく規定されていますが、ここでは省略します

一定規模以上のボイラーを扱う事業所の場合、会社は職場の管理者として【ボイラー取扱作業主任者】を選任する必要があります。

2級ボイラー技士の免許さえあれば、全ての大きさのボイラーを取り扱い出来るのに対して、【ボイラー取扱作業主任者】はボイラーの伝熱面積の大きさによって、選任されるボイラー資格が設定されています。

1級ボイラー技士と、特級ボイラー技士の免許は、大型のボイラーを扱う為の免許と言うよりは、大型のボイラーの作業主任者になる為に必要であると言えるでしょう。

4. ボイラー技士免許取得方法

ボイラー技士の受験資格

ボイラー技士の免許を取得する為には、免許試験に合格する必要がありますが、2級ボイラー技士であれば受験資格はありませんので、誰でも免許試験の受験が可能です。

ボイラー技士免許の申請

ボイラー技士免許申請

ボイラー技士の免許(2級・1級・特級)は、免許試験に合格するだけでは交付されません。

ボイラー技士の免許試験の合格にプラスして、実務経験がある場合のみ、免許の申請・交付が可能です。

実務経験の証明書は、会社に記入をお願いし用意してもらうことになります。

2級のボイラー技士はボイラーの取扱い経験が無い方の受験がほとんどなので、実務経験の代わりとして【ボイラー実技講習】という講習を受ける事で、免許の交付が可能になります。

ボイラー実技講習とは

ボイラー協会などが行う、ボイラーの取り扱いの為の実技講習です。

3日間(20時間)で行われ、講習を受ける事で、2級ボイラー技士免許の交付要件を取得する事が出来ます。

2日の座学と、1日の実技講習で

・ボイラーの構造

・ボイラーの取扱い方法

・ボイラー取扱実習

などの内容を、学習する事が出来ます。

5. 試験内容

ボイラー技士の試験に実技試験は無く、学科試験が全てとなります。

試験内容としては下記の通りです。

・ボイラーの構造に関する知識

・ボイラーの取扱いに関する知識

・燃料及び燃焼に関する知識

・労働安全衛生法などの法律の知識

一見難しそうな内容に思えますが、実際の試験は選択式(5択)なので、ある程度勉強しておけば、十分合格可能な試験と言えます。

年間試験回数

特級は年1回、1級は1年に7回程度の試験開催となっています。

2級は毎月試験がありますので、受験勉強の進み具合に合わせて受験日を調整しやすいと言えます。

6. 難易度

難易度は級によって変わります。

・2級

合格率60%程度 ・受験者約30,000人

・1級

合格率60%程度・受験者数約6,000人

・特級

合格率25%程度・受験者数約600人

2級の合格率は60%位になっていますが、受験資格が不要の為、「勉強が間に合っていないけど、とりあえず受けた」「会社から資格取得を促されたが、本腰を入れて勉強していない」という方が毎回一定数居ることから、実際の合格率はもう少し高いと言えます。

2級ボイラー技士の試験内容はしっかり勉強しておけば合格点が取れるように作ってありますので、事前に勉強により、十分合格可能な資格と言えます。

7. ボイラー技士が求められる求人と給与は

ボイラー技士は、オフィスビル・病院・公共施設・商業施設などの中で、ボイラーだけを扱うのでは無く、空調・冷暖房・上下水道・電気などを一括して行う仕事で大きな需要があります。

これらは一括してビルメンテナンスとして求人が出ている場合もあります。

月給は初任給18~22万円程度がほとんどであり、プラスして所持免許によって資格手当がつく場合もあります。

その他では、ボイラーのメーカーやプラントなどで、ボイラー製造・修理などを行う求人もあります。

月給はメンテナンス系の仕事よりも高く、初任給25万円程度という求人もありますが、工業系の知識や、理系の学校の出身である事が条件である場合も多く、採用条件が厳しくなります。

8. 求人のチェックポイント

ボイラー技士の求人は担当する施設や職場によって、勤務形態が大きく変わります。

体育館や役所などの公共施設であれば、日勤での就業も考えられますが、

設備に異常が起こらないように24時間見守る仕事もあり、交代制のシフト勤務になっている求人も多いです。

交代制のシフト勤務の場合、

・シフト勤務のスケジュール(休みのタイミング)

・月間休日、年間休日

・休憩時間(仮眠時間について)

・仮眠時間に対応する場合があるか

などを確認しておくことで、納得の出来る職場を見つける事が出来ると言えます。

その他、資格手当などがあるかなどもチェックしておくと良いでしょう。

参考ページ:自衛官の再就職|求人票の見方と注意するポイント

実務経験が無い場合

ボイラー運転の業務は、資格があれば即戦力として重宝される訳では無く、実務経験が重要視されています。

ボイラー技士の免許があって実務経験が無い場合は、就職援護経由などで、その旨を企業の担当者に伝え、問題無いか確認しておくべきでしょう。

もちろんその際は、入社後に積極的に仕事を覚える事や、他の資格取得も目指したいと言う、前向きな姿勢をアピールしておきましょう。

参考ページ:再就職方法の比較|自衛隊の基地援護室を活用するメリットとは

9.ボイラーを使わない施設もある

ボイラーで熱を取り出す方法以外に、ボイラーを使用せずに効率的に熱を取り出す方法もあります。

ここではその一部を紹介します。

ボイラーの代替システム

・ヒートポンプチラー

家庭用のエアコンとほとんど同じシステムで温水と冷水を取り出せるシステムであり、

日々のメンテナンスが容易である事から、新しい建物に採用されています。

・吸収冷温水機

気化熱を利用した複雑なシステムであり、温水と冷水の両方を取り出せる為、冷暖房に使用されています。ガスを燃やす熱を動力にしている場合がほとんどです。

・コージェネレーションシステム

発電用のガスエンジンなどを搭載しており、ガスから電気と熱の2つを取り出せる効率的なシステムです。

コージェネと呼ばれる事が多いです。

職場でボイラーを使用せず、上記のようなシステムを使っている場合でも、温水を発生させる機械の基本的な仕組みや電気関係、火を使用する事について、ボイラー技士の資格を持っていると安全面や業務の面で役立つことが多いと言われています。

上記の設備がある職場の求人では、ボイラー技士の免許が必須でない場合もありますが、安全面や機械の仕組みについて、ある程度理解している、免許所持者を優遇・採用する傾向があります。

10. さらなるスキルアップの為に

ボイラー技士の免許は国家資格ですが、比較的取得しやすい資格なので、ボイラー技士の資格だけで一生食べていけるとは限りません。

現在ではボイラーの運転だけを任される仕事は減ってきており、電気・空調などの仕事も一括して任されるケースがほとんどです。

ボイラー技士の資格と相性の良い下記の資格(電気・空調関係など)を取る事で、どの職場でも求められるスキルのある人材になる事が出来ます。

・第2種電気工事士

電気工事を行う為の資格でありビル・設備メンテナンスの仕事の場合、取得が推奨されている資格です。

ビルなどの設備メンテナンスを行う場合、配電盤などを開けたり、コンセントや電灯の修繕・修理などを行う場合もあるので、有資格者が優遇される事が多いです。

・第3種電気主任技術者

施設の電気設備に関して、保安監督の業務を行う事が出来ます。

2種電気工事士の資格に比べると、取得の難易度はかなり高いです。

・第3種冷凍機械責任者

空調のメンテナンスの際に役に立つ資格です。

厳密には、「冷凍機械にかかわる高圧ガスの製造施設で保守管理の仕事が出来る資格」ですが、この知識が空調の仕組みを理解するのに役立つため、空調機器のメンテナンス時に活かす事が出来ます。

・乙種4類危険物取扱者

ボイラーの運転に必要な【軽油・重油】などの燃料を扱う為の資格です。

ボイラー燃料の管理を行う際に必要となります。

参考ページ:自衛官の再就職|乙種4類危険物取扱者の資格を活かせる仕事とは

・ボイラー整備士・ボイラー溶接士

ボイラーを停止させて、大がかりなメンテナンスや改修工事を行う際に必要となります。

メンテナンス系の仕事で求められることは稀ですが、ボイラーのメーカーやプラントなどで働く場合に、資格を活かす事が出来ます。

11.まとめ

現在では、ボイラーを扱うだけの仕事は少なくなっており、ビル・工場・建物の電気関係や空調なども、まとめて管理するような働き方が一般的となっています。

ボイラー技士免許が不要な【小型ボイラー】を使用している場合や、そもそもボイラーを置かない職場も増えています。

このようにボイラー技士の免許が不要な職場が増えている事から、ボイラーの取扱いだけでなく、電気・空調などあらゆる設備の知識や資格を持っている人が求められています。

ボイラー関係の仕事を再就職先として考えている場合、ボイラー以外の電気・空調などの知識についても興味を持てるかどうかも重要なポイントと言えるでしょう。

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