【5分で分かる】自衛官が再就職の前に知っておくべき社会保険の話
自衛官は特別職の国家公務員であることから、健康保険や労災保険などの社会保険に関して、しっかりしている為、働く上で特に不安は無いと思います。
ですが、再就職をして民間企業に移った場合はどうでしょう。
会社員として働くうえで、健康保険や労災保険などの社会保険が、どこまで自分を守ってくれるのか知らない方が多いのではないでしょうか?
自分がケガなどをして働けなくなってしまった時、社会保険の保障が自分や家族をどの様に守ってくれるのか?よく知っておく事で、万が一の時の準備や、保険の見直しの時などにも役立つと言えるでしょう。
このページでは、社会保険の基礎知識について、説明していきたいと思います。
5つの社会保険の基礎知識
1.年金保険
1.1老齢年金
1.2障害年金
1.3遺族年金
2.健康保険
3.介護保険
4.雇用保険
5.労災保険
6.まとめ
5つの社会保険の基礎知識
社会保険とは日本の社会保障制度の一つで、病気やケガ、事故、失業、老後の生活などのリスクに備えて、国民の生活を保障するために国が定めた公的な保険制度です。
国民が相互に助け合うという「相互扶助(ふじょ)」の理念の下で作られた国民皆保険の制度なので、国民全員で保険料を負担し、国も負担金を支払っています。
簡単に言うと、事故やケガなどの不測の事態が原因で生活に困る事が無いように、国民全員で助け合う制度と言えます。
社会保険と言う言葉は、広い意味と狭い意味で使われる事があり、
広い意味での社会保険という言葉は、下記5つの公的な保険を指します。
1 年金保険(社会保険)
2 健康保険(社会保険)
3 介護保険(社会保険)
4 雇用保険(社会保険・労働保険)
5 労災保険(社会保険・労働保険)
狭い意味での社会保険とは、(1.年金保険)、(2医療保険)、(3介護保険)の3つのことを指します。
(4.雇用保険)(5.労災保険)の2つは労働保険と言われています。
ここでは5つの保険全ての基礎を説明していきます。
1.年金保険
自営業者・学生・専業主婦・無職の人なども20歳になったら自動的に「国民年金」に加入することになります。
会社員・公務員・自衛官などは「厚生年金」と「国民年金」の2つに加入します。
この場合は、毎月支払っている厚生年金保険料の中に、国民年金の保険料が含まれています。
年金保険の保険料
国民年金保険料
16,340円/月額(平成30年度)
※毎年保険料の変更があります
厚生年金の保険料は給与や賞与など、給与条件によって変わるので、概算となります。
厚生年金保険料
月給30万円→個人負担の保険料 約27,400円/月額
月給40万円→個人負担の保険料 約37,500円/月額
月給50万円→個人負担の保険料 約45,700円/月額
下で説明する(老齢年金)(障害年金)(遺族年金)の3つをまとめて、年金保険と言います。
「65歳になって支給されるものが年金」という考えが一般的ですが、これは年金保険の中の(老齢年金)のことだけを指しています。
老齢年金
老後生活の保障を受ける為、積み立てた金額に応じて老後に年金を受け取る事が出来ます。
自衛官の皆さんは、国民年金・厚生年金の両方に加入していますので、両方の(老齢年金)を65歳になったら受け取る事が出来ます。
老齢年金を受け取る為には、保険料を納めた・免除された期間が最低10年以上必要です。
受取りは基本的に65歳からですが、60歳~64歳の間で受け取りを開始する、繰り上げ受給をする事も、66~70歳の間で受け取りを開始する繰り下げ受給をする事もできます。
繰り上げの場合は年金額が減り、繰り下げの場合は年金額が増加します。
老齢基礎年金
国民年金に加入している方が受け取る老齢年金です。
20歳から60歳になるまでの40年間、全額の保険料を納めた場合は、65歳から満額の老齢基礎年金が支給されます。
老齢厚生年金
厚生年金に加入している公務員・会社員・自衛官などが受け取る年金です。
老齢基礎年金を受けるのに必要な資格期間を満たしている方が65歳になった時に、老齢基礎年金に給与や賞与の額に応じて上乗せした金額が支払われます。
毎月支払っている厚生年金保険料の中に、国民年金の保険料が含まれています。
70歳まで加入が可能ですので、再就職後に60歳を超えて企業勤めをする場合は、原則として老齢厚生年金に加入します。
※60歳以降(昭和36年4月1日以前に生まれた)方で規定以上の収入がある方は、十分な収入があると見なされ、厚生年金の支給が減額や、停止となる場合があります(在職老齢年金)。
再就職先で、現職の時と変わらないような給料待遇の場合は、この制度に該当する場合があります。再就職先の待遇についても確認しておくべきでしょう。
自衛官の皆さんは厚生年金に加入していますが、昔の共済年金だった時代に保険料を納めている方は、さらにプラスして(職域部分)の年金を受け取る事になります。
参考ページ:自衛官の年金・基礎知識|共済年金や厚生年金って何?
障害年金
病気やケガなどが原因による障害により、仕事や生活が制限される場合、認定が下りれば年金を受け取る事が出来ます。
障害年金受け取りの原則として、初診日(初めて病院に行った日)に国民年金に加入している必要があり、今までの年金加入期間のうち2/3の期間が納付済or免除されていた。過去1年で保険料の未納期間がない、などいくつかの条件に当てはまり、認定を受ける必要があります。
また、障害の程度が重い1級に近づくほど、年金の支給額は多くなります。
※障害年金受給の確定には、初診日から1年6か月後も障害状態であるかなど、認定について細かい定めがありますので、障害を受けたからと言ってすぐ年金が支給される訳ではないと知っておきましょう。
障害基礎年金
国民年金に加入している方が受け取る障害年金です。
20歳未満や60歳以上の国民年金に加入していない方も年金を受け取る事が出来ます。
障害等級の1級・2級を対象に年金が支払われます。
障害厚生年金
厚生年金に加入している公務員・会社員・自衛官などが受け取る年金です。
障害基礎年金に上乗せして障害厚生年金が支払われます。
受け取るには初診日に厚生年金に加入している必要があります。
障害等級の1級・2級・3級を対象に年金が支払われます。3級未満の障害についても、場合によっては障害手当金と言う一時金が支払われる事があります。
遺族年金
被保険者が死亡した時、扶養されていた妻や子どもなど残された家族が受け取れる年金になります。
受給には今までの保険料納付期間など、いくつかの条件を満たす必要があります。
遺族基礎年金
国民年金に加入している方が受け取る障害年金です。
残された遺族、(子供のいる配偶者)と(子供)に対して支払われる年金となります。
子供の人数によって支給額が変わり、子供が18歳以上(18歳になってから最初に迎える3月31日以降)になると支給は止まります(障害がある場合は20歳まで)。配偶者が残されていたとしても18歳に満たない子供が居ない場合は、支給されません。
遺族基礎年金は子育て支援の意味合いが強い年金と考えておくと良いでしょう。
遺族厚生年金
厚生年金に加入している公務員・会社員・自衛官などが受け取る年金です。
遺族基礎年金のように、子供だけに対しての支給ではなく、残された遺族である、配偶者・子供・父母・孫・祖父母の順番で年金を受け取る権利があります。
2.健康保険
業務外のケガなどで病院などに行った時に利用すると思いますが、出産・死亡の場合にも医療費の保障が受けられる保険となっています。
基本的に全国民が何らかの健康保険に加入する事になります。
保障の内容については、加入する健康保険の保障内容に準ずる形となります。
病院での医療費について、「健康保険証があれば3割負担で済む」という認識を持っていると思いますが、残りの7割については、加入する健康保険が月々皆さんから集めた保険料をもとに負担しています。
また、75歳以上の方は、後期高齢者医療制度へ移行します。
健康保険の保険料
住まいの地域や世帯人数によって変わりますので、概算となります。
[横浜市 父母(54歳) 子供2名(高校生・中学生) 合計4人世帯の場合]
国民健康保険 保険料
月給30万円(年収360万円)→個人負担の保険料 約24,000円/月額
月給40万円(年収480万円)→個人負担の保険料 約33,500円/月額
月給50万円(年収600万円)→個人負担の保険料 約42,000円/月額
協会けんぽ 保険料
月給30万円(年収360万円)→個人負担の保険料 約17,200円/月額
月給40万円(年収480万円)→個人負担の保険料 約23,500円/月額
月給50万円(年収600万円)→個人負担の保険料 約28,700円/月額
3.介護保険
介護保険とは、介護が必要な時に、費用を給付してくれる保険制度です。
介護保険は40歳から加入が義務付けられており、健康保険の保険料と一緒に徴収されます。65歳以上になると医療保険と切り離され、原則として年金から天引きされます。
また、介護保険の給付を受けるには、手続きや介護認定の審査が必要です。
介護認定を受けた場合、今後の介護支援の計画についてケアマネージャが資料作成し、その内容に基づいた支援を受ける事が出来ます。
介護保険の受給は、原則として65歳以上の方となりますが、40~64歳の方でも特定疾病として指定された病気(末期がんなど)により介護認定を受けた場合は、サービスを受ける事が可能です。
介護保険の保険料
介護保険の保険料について、40~64歳の方については、上記の健康保険料に含まれています。
64歳以上の場合は年収の有無や金額によって上下しますが、年金からの天引きで、月額3000円~5000円程度保険料を支払う事になります。
ちなみに、64歳以上で収入が年収300万円程度ある場合は、月額7000円ほどです。
4.雇用保険
雇用保険とは、労働者の雇用の安定を図るための保険です。
次の仕事が見つかるまでの期間「失業手当(失業保険)」として、通常の賃金の50%~80%の給付を受ける事が出来ます。
※失業手当については、継続勤務期間に応じて90日~330日の間で給付を受ける事になります。また、給付を受けるには1年以上雇用保険に加入している必要があります。
今まで説明してきた年金保険・健康保険・介護保険のように、生活の負担を軽減すると言うよりは、再度仕事を見つけるまでの一時的な期間の生活を保障する保険です。
そのほか、「教育訓練給付」、「育児休業給付」、「介護休業給付」など、社員が長く働き続ける為に役立つ給付もあります。雇用保険は社員の雇用を守る為に存在しているので、会社は強制的に加入します。また、保険料に関しては、会社と社員の双方が負担し、保険料は事業の内容によって若干異なります。
雇用保険の保険料
事業の内容によって金額が変わりますので、一般的な事業での概算となります。
※建設業や農林水産業は保険料が高く設定されています。
雇用保険 保険料
月給30万円(年収360万円)→個人負担の保険料 約900円/月額
月給40万円(年収480万円)→個人負担の保険料 約1,200円/月額
月給50万円(年収600万円)→個人負担の保険料 約1,500円/月額
5.労災保険
業務上・通勤中の事故や災害が原因のケガ・病気について治療費や休業中の賃金を補償する保険です。
上記のケガ・病気が原因で障害が残った場合は被災者への保険給付が行われ、死亡した場合には遺族への保険給付が行われます。
労災保険の保険料
治療にかかる費用は全額保険者の支払いとなり、自己負担はありません。
また、保険料は全額会社が支払っています。
6.まとめ
1年金保険(社会保険)
2健康保険(社会保険)
3介護保険(社会保険)
4雇用保険(社会保険・労働保険)
5労災保険(社会保険・労働保険)
上記5つの社会保険について、基本的な知識を説明しました。
社会保険は、「相互扶助」の理念の下で作られた国民皆保険であり、国民全員で保険料を負担しています。さらに、社会保険は国民だけでなく国も保険料の負担をしている事から、私たちが払っている保険料以上の手厚い保障内容になっています。
自分に何かあった時など、自分や家族が社会保障の範囲でどの様な補償を受けられるか知ることは、生活を安定させるうえで重要です。
これらの基礎知識については、最低限知っておくと良いでしょう。