自衛官の定年後の給与とは?同年代の給与相場を解説!

自衛官の皆さんは、防衛省内において階級や俸給号俸で給与の金額に違いがあることや、昇給額、階級ごとの大まかな給与について、よく理解されていると思います。

当たり前ですが、民間企業の給与についても、役職や技術力における給与や俸級に違いがあります。

現在日本の民間企業で働いている50代・60代社会人の平均給与や、民間企業の給与情報などについて説明していきますので、再就職の時の参考にして頂ければと思います。

1.民間企業における50代・60代の平均給与は?

1.1 55歳から給与が下がる?民間企業の役職定年とは

1.2 多くの人にとって、55歳が給与ダウンの区切り

2. 産業別の50代・60代の平均給与は?

2.1 給与が高めの産業では特殊な技能や経験を求めている

2.1 給与が低めの産業も再就職候補として考えるべき

3. 再就職したときの給与とは

4. 最後に

1 民間企業における50代・60代の平均給与は?

まず、50代・60代における、民間企業の社員の平均給与をご紹介します。

50代・60代の企業規模別平均給与の表

参考資料:厚生労働省・平成29年度賃金構造基本統計調査の概要
※給与は残業・深夜・休日手当など、手当等を差し引いた金額になります。

この表は、50歳から64歳までの民間企業の給与平均を、企業規模別に分けて表にしたものです。

基本的に給与は、長年積み重ねた勤務実績や成果を反映した額になりますので、入社の時から給与は上がり続け、50~54歳位がピークとなります。

これは自衛官の給与にも当てはまる事です。

この表を見ることで、企業の規模によって平均の給与が変わる事が分かります。

大企業は中企業・小企業と比べると、50歳~54歳の給与からの減少率が大きいという事も分かります。

また、女性の給与は男性と比べると50~54歳のピークの給与が低くなっている分、その後の減少率はとても緩やかになっています。

これは、一般職として働く女性が多い事などに関係しています。

※自衛官の皆さんご存知の通り、女性が自衛官として採用された場合は、男女の差による給与の違いはありません。

1.1 55歳から給与が下がる?民間企業の役職定年とは

役職定年とは、55歳で管理者という役職から退き、次世代の社員を育成し、組織の新陳代謝を促す為に、後輩社員に管理職の立場を譲るという制度です。

新卒大量採用を行い、ポストが不足しがちな企業、主に大企業で多く採用されています。

役職定年制度がある企業で、55歳を超えて働く為には【50代までに部長・次長以上になっている必要がある】など、各企業で定められた要件を満たす必要があります。

結果として、そこにまで達しない多くの社員が役職定年を迎え、給与が下がる事になります。

この表で55歳から給与が下がる傾向になっている原因は、役職定年を迎えた社員が管理者から役職無しの一般社員への変更になることや、役職定年後の転籍・転職により給与が下がる方が一定数いるからと言えます。

中企業や小企業では、社員が55歳を超えても、企業の人員不足などの原因から、今までの仕事を続ける場合が多く、給与も仕事に見合った額となる傾向が見られます。

その結果、大企業と比べて給与の減少率が緩やかになっていると考えられるでしょう

1.2 多くの人にとって、55歳が給与ダウンの区切り

民間企業は60歳が定年というイメージですが、結局のところ55歳を区切りに、ほとんどの方の給与額は下がってしまいます。

今まで長い年月企業に勤め、多くの知識やスキルを持っている社員であっても、給与がダウンすると考えておいた方が良いでしょう。

2 産業別の50代・60代の平均給与は?

次に、産業別に分けた民間企業の平均給与をご紹介します。

再就職先として、候補にあげている産業の欄を見ていただければと思います。

50代・60代の産業別平均給与の表1

参考資料:厚生労働省・平成29年度賃金構造基本統計調査の概要
※給与は残業・深夜・休日手当など、手当等を差し引いた金額になります。

各産業の説明

【建設業】 土木工事業・大工工事・電気工事・解体工事など、建設工事に関わる事業

【製造業】 食品、繊維、石油製品、鉄鋼、機械、電子機器などの製造に関わる事業

【情報通信業】 放送業、通信業、インターネットサービス、映像・音声・文字情報制作業などに関わる事業

【運輸・郵便業】 鉄道、自動車、船舶、航空機などで旅客、貨物を運送する業務や倉庫業務などに関わる事業

50代・60代の産業別平均給与の表2

参考資料:厚生労働省・平成29年度賃金構造基本統計調査の概要
※給与は残業・深夜・休日手当など、手当等を差し引いた金額になります。

各産業の説明

【卸売・小売業】食品・機械・建材・金属製品などの商品の卸売を関わる事業

【金融・保険業】銀行・金融・保険・金融商品取引に関わる事業

【学術研究・専門・技術サービス】研究開発・広告・技術サービスに関わる事業

【宿泊・飲食サービス業】宿泊・飲食・飲食持ち帰り・配達サービスに関わる事業

50代・60代の産業別平均給与の表3

参考資料:厚生労働省・平成29年度賃金構造基本統計調査の概要
※給与は残業・深夜・休日手当など、手当等を差し引いた金額になります。

各産業の説明

【生活関連サービス・娯楽業】洗濯・理容・美容・浴場・旅行・遊技場・公園・スポーツ施設・冠婚葬祭に関わる事業

【教育・学習支援業】幼稚園・学校・支援学校・学習塾・教育に関わる事業

【医療・福祉】病院・診療所・保健所・介護・社会保険・障害者福祉に関わる事業

【サービス業】警備・建物サービス・速記・政治団体・学術文化・宗教・廃棄物処理等、他のサービスに分類されないもの

2.1 給与が高めの産業では特殊な技能や経験を求めている

平均給与については、【情報通信業】【金融・保険業】【学術研究・専門技術サービス業】【教育・学習支援業】などの産業は、経験や特別なスキルが求められる為に、比較的高めの給与設定となっています。

再就職の際に、給与の高い産業や仕事を応募先に選ぶ場合は、自衛官時代の経験やスキルが応募する仕事にマッチしていないと再就職は厳しいと言えます。

また経験やスキルが不足している状況で、入社出来たとしても、上記の給与を大きく下回る事は間違いないでしょう。

2.2 給与が低めの産業も再就職候補として考えるべき

【運輸・郵便】【宿泊・飲食サービス】【サービス業】【生活関連サービス・娯楽業】などの、特別なスキルや資格が求められると言うよりは、元気や体力・気配りが求められる産業については、比較的低めの給与設定となっています。

これらの産業は給与が低い事から、再就職先の候補から外してしまいがちですが、自衛官として培った強みである、元気や体力・気配りなどをアピール材料に出来ますので、再就職しやすいと言えるでしょう。

3  再就職したときの給与とは

50代の平均給与をお伝えしましたが、20~24歳の平均給与を知る事で、自衛官を退職後、未経験として入社した場合の給与が予想出来ます。

20~24歳という年齢は、まだ企業に入社して間もない頃であり、仕事に必要なスキルや資格などを持っていない状況です。

20~24歳の平均給与は、産業ごとの未経験の人向けの給与の平均と考えられ、定年退職自衛官の方が民間企業に入社する時には、この給与がベースになると言えます。

退職自衛官の方は、未経験とはいえ社会経験がある事から、この給与よりは若干高めの設定となる事が多いようです。

細かい給与額については、経験や実績が個々によって全く違う点から、一概には言えませんが基本的には20~24歳の平均給与の金額をベースに、再就職先で役立つスキルや資格を持っているほど金額が加算されていくと考えて良いでしょう。

20代の産業別平均給与の表

参考資料:厚生労働省・平成29年度賃金構造基本統計調査の概要
※給与は残業・深夜・休日手当など、手当等を差し引いた金額になります。
※賞与の金額は考慮していない為、年収を計算する場合は賞与額の加算が必要。
(例)2か月分支給の場合は、(上記金額×2 = 2か月分賞与)の加算

4   最後に

再就職を目指す自衛官の方にとって、自衛官としての勤務経験が、再就職先の民間企業での業務がほとんど同じで、即戦力として働けるというケースは非常に珍しい事です。

また、業務内容がほとんど同じだったとしても、取引先の違い、仕事の進め方の違いなど異なる作業環境になる事を考えると、入社してすぐ即戦力として民間企業で働く事は難しいと言えるでしょう。

世間の就職状況として、50代の未経験者歓迎という求人はかなり数が少ないのが現状ですので、50代の方で未経験の仕事で就職する事は、本来非常に難しい事です。

ですが、国のために長年活躍した事に対して信頼を寄せ、退職自衛官を雇用したいと考えている企業は数多くあります。

また、退職自衛官の再就職の時には、就職援護の方の支援がある事から、一般の未経験50代の方の転職活動に比べると、自衛官の再就職は何倍も恵まれており、仕事の選択肢も多いと言えます。

自衛官再就職後の給与については、一般的に現職の時の給与の50%~70%になると言われており、恐らく年収は多くの方が300万円~400万円の間になると考えられます。

現職の時の給与と比べると、一見低い金額に思えますが、一般の未経験50代の方の転職活動ですと、選り好みしていないのに仕事が見つからず、無職・無給で一年以上過ごしてしまう方も多く存在するのが現実です。

仮に1年仕事が見つからなかった場合は、再就職していれば本来得られたはずの給与をロスする事になりますし、家賃などの生活費を払いながら暮らす事になりますので、貯金ありきの赤字生活となってしまいます。

再就職活動の時に、給与が低いから応募を控える事も選択としては間違いありませんが、自衛官の再就職は一般の50代の転職活動よりは恵まれているという事や、自衛官退職後に再就職するまでの期間が空いてしまうと再就職が困難になるなど、不利になってしまうことも忘れてはいけないでしょう

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