自衛官の再就職でありがちな3つのミスマッチ事例と仕事の選び方
自衛官の皆さんが再就職する場合、今までとは違う民間企業へと再就職する方で、このような不安をお持ちではないでしょうか?
「民間企業の業務内容がよく分からない、会社が求めている人物やスキルが分からない。分かっていることと言えば、OBがいるとか、知人がいることくらい・・・」
10年、もしくは若い自衛官の方なら定年まで30年から40年は務めるのですから、再就職は大きな決断です。第2の人生を決める再就職の時に、このレベルの理解で本当に良いのでしょうか?
「再就職したが、任された仕事がミスの許されない厳しい仕事だった・・・」「社風や仕事の内容が当初考えていたものと違い、このまま働き続けることが辛い・・・」などの状況から、再就職後1年もせず退職してしまう自衛官の方も多くいます。
これらは事前の調査不足による “ミスマッチ”がほとんどです。
再就職で起こりうる“ミスマッチ”を事前に把握し、再就職の失敗を防ぐ為の対策を、事例をふまえて紹介していきます。
再就職で要注意!3つの代表的なミスマッチ!
【1 業種・職種決定のミスマッチ】
「実際に仕事を始めてみると、仕事の内容が入社前に想像していたものと違った。」
(例1)【仕事を決めた理由】
「現職の時は、特殊な業務を行っていたが、それが民間企業でも役立つスキルかと言われると分からない・・・。そう考えると、自分に再就職で活かせそうな強みが無いので、未経験から働けそうで、内定がすぐ出そうな事務の職種に絞って選考を受けよう。」
↓
【働いてみて分かったこと】
「覚える事が多く、ミスが許されない業務で精神的につらい・・・」
ミスマッチの原因
事務作業はエクセルやワードなどパソコンを使って、正確に速く仕事をこなす必要があります。また、書類作成業務以外にも覚えることが多くあり、社内・社外に向けて気配りが必要な事から、決して簡単な仕事ではありません。
これは、事前の仕事内容の調査が不足していたというケースです。
「未経験からでも働けそう・内定がすぐ出そう」という、内定をもらうことだけに焦点を当てた仕事選びでなく、この仕事では、自分のどのようなところが強みになるかという仕事選びが出来ていれば、このようなミスマッチは起きなかったはずです。
参考ページ:攻めの再就職|自衛官の職場見学の方法とチェックすべきポイント
【2 待遇・勤務条件・雇用条件のミスマッチ】
「会社が求めるスキル・勤務条件などが、実際に働いてみると想像と違った。」
(例2)【仕事を決めた理由】
「現職の時は陸自の輸送科で働いていた。妻は平日のフルタイムで働いている事から、休みを合わせる為に、平日夜と土日は家に居たいと考えていた。
大型自動車免許(限定なし)を所持している為、給与の高い大型トラックドライバーの仕事での再就職を考えたが、調べた求人では、[土日出勤あり・夜勤あり・シフト制]という勤務スケジュールが多く考え直す事に。
自分はトラックドライバーに向いていると思っていたが方向転換し、土日出勤やシフト勤務の無い仕事で、給与が同程度の営業の仕事を選んだ」
↓
【働いてみて分かったこと】
「給与は良いが仕事を時間内に終わらせる事が難しく、夜遅くまで残業がある。また、土日の休日出勤も毎月あり、入社前に考えていた内容と違う・・・」
ミスマッチの原因
これは、自分の適性などを考えず、待遇面だけを見て決めてしまったというケースです。
土日出勤に関しても基本的には休みですが、配属された先は、取引先の要望に応じて、土日出勤の必要がある部署でした。
面接で「必要に応じて土日出勤の可能性あり」とは面接官から聞いていました。
ただ、現職でも年に数回程度、行事や業務量に応じて土日出勤があった為、この会社も年に数回程度の土日出勤だろうと、自分で勝手に解釈してしまいました。
詳しく質問をせず、勝手に解釈してしまったことも、ミスマッチが起きた原因です。
求人票の待遇など、条件の良い所だけを見たり、思い込んだりせず、事前に調べたうえで、企業の担当者や就職援護の方に確認を行い、長く働き続けることの出来る会社を選ぶよう注意しましょう。
【3 性格面のミスマッチ】
「性格や考え方、などが会社の社風や風土と合わなかった。」
(例3)【仕事を決めた理由】
「仲間とコミュニケーションを密にとり、チームプレーが必要な仕事がしたいと考えていた。静かに仕事をこなすよりは賑やかな雰囲気の職場が希望であった為、面接で訪問した会社の中で、一番職場が賑やかで雰囲気の良かった物流会社のトラックドライバーとして入社した」
↓
【働いてみて分かったこと】
「営業で運搬作業として外回りをすると、完全な個人行動であり、チームプレーが必要な仕事とは、ほど遠かった・・・」
ミスマッチの原因
これは、自分の性格や考え方を把握するまでは良かったのですが、実際の仕事が自分の性格に合っていなかったケースです。
このような場合は、すぐに退職したいとはならないまでも、自分に合った職場に変わるなどの変化が無ければ、この先ずっと「自分に合っていない・・・」と思いながら働くことになってしまいます。
会社全体の雰囲気や、仕事の進め方が自分の考え方や性格に合っていると感じても、自分自身の適性について、今一度深く考えることをオススメします。
会社の規模やサービス・社風だけではなく、業務の適正についても深く考えることで、入社後のギャップを防ぐ事が可能です。
会社もミスマッチは起こしたくない
採用活動は、会社の成長に繋がる社員を確保する大切な企業戦略です。そして、採用した社員が活躍することで初めて採用の成果があったといえます。
会社が採用活動で最も避けたいことは、採用のミスマッチです。どんなに魅力的な社員が入社したとしても、ミスマッチが発生してしまうと、トラブルの要因になるかもしれませんし、最悪の場合には早期退職に繋がってしまいます。
こうなってしまうと、会社の労力やコストがすべて無駄になり、会社・社員の双方にとって何の利益にもならないのです。
〇再就職のミスマッチを防ぐ為に〇
【1 就職援護担当の方との情報共有!】
新卒の就職活動や民間企業の会社員の転職活動と違い、自衛官の場合には基地や就職援護の方たちが味方としてついており、皆さんの再就職に多くの労力をかけています。
また、就職援護の方は、一人一人の希望など、多くの情報を聞き、頭に入れたうえで再就職先とのマッチングをはかり、良い再就職となるよう考えています。
就職援護の方と前々から相談することが理想ですが、実際には再就職を検討している皆さんはこのように考えていませんか?
・「退職まで1年を切ってから就職援護の方にお世話になろう。」
・「今の仕事が忙しいので、とりあえず後回し」
・「今まで関わったことが無いので、何となく就職援護の所に行きづらい」
・「就職援護の方に会っても、いい仕事あったら教えて下さい!くらいしか話さない」
この状況では、就職援護の方が自衛官であるあなたを知る情報源は、人事記録や作成された履歴書などのデータや書面上だけとなりますから、再就職についての本音や希望などを、くみ取りきれないかもしれません。
退職まで1年切ったところから大急ぎで来る自衛官よりは、もっと前から相談に来ている自衛官の方ですと時間に余裕もあり、話も詳しく聞ける分、手厚いサポートが受けられます。
ぜひ、就職援護の方と連携し、情報の共有のため積極的に再就職への活動に活かしていきましょう。
転職活動に関する情報や企業情報、先輩方の就職事例などの情報を教えてくれますので、再就職への活動が一歩前進するでしょう。
参考ページ:再就職方法の比較|自衛隊の基地援護室を活用するメリットとは
【2 自己分析を行う!】
自己分析は、再就職する時など、人生において大きな決断をする場面で役立つ作業です。
自分のことをわかっていると思っていても、毎日の仕事や生活全体に流されていて、実際には理解していない・考えていない部分が多くあります。
本当の自分には、「もっとこうしたい」「こうありたい」「これは嫌だ」「これはしたくない」という思いはあるのに、社会人として過ごすにあたり、自分自身の真の思いは心の中で抑えています。これは、組織の中で生きていく上で必要なことです。
しかし、自衛隊の中で長く働いてきてから、民間企業に再就職して心機一転頑張ることになると、入社して仕事に慣れるまでは、今まで以上のストレスがかかるかもしれません。このような大変な時期を乗り越え、ミスマッチなく再就職を成功させる為には、自己分析をしっかり行い自分自身の真の思いを理解しておくべきでしょう。
全てを整理した上で、再就職に対する考えや思いを就職援護の方と話し合い、選択、決断することが再就職の時には必要と言えるでしょう。
まとめ
再職後のミスマッチの原因は、仕事や待遇についての調査不足や、自己分析の不足によるものが多く見られます。
家庭や住む場所、自分自身のことなど、しっかり整理した上での新たな人生のスタートとなります。調査や自己分析、相談などを十分にし、後悔をしない選択、決断をしましょう。
人間は、自分の個人的な話をすることに抵抗があるものです。再就職をする時に、「これは知られたくない」「これは言わないでおこう」と一つ、二つをしまい込んだまま再就職の決断をした場合に、入社後に常に心の中のわだかまりとなり、あなたを悩ます原因となるかもしれません。
最悪の場合、早期退職に繋がることも危険もありますので、気持ちよくリスタートがきれる環境を自分自身で意識して築き上げるようにしましょう。